ダグラムの頭部に関する一考察

 ダグラムについての記事を書きます。と言いましても、メカとしてのダグラムをあれこれ評してみようというのではありません。
 先般ダグラムの3Dモデルを作ったときに色々気が付いた不整合がありまして、だけど矛盾だ無理があるとBBS等で愚痴ってばかりいるというのも非生産的ですから、どうせなら記事として具体的に書いてみようと思ったわけです。


 ですんで以下に書くことは、それ故にダグラムがメカとしてダメだなんて趣旨では全然ありませんし、大河原氏が不誠実な仕事(デザイン)をしたなんてことでもありません。あくまで2Dのアニメ設定を3Dにする時に見えてくるちょっとした問題点を指摘しようというだけのものです。
 そもアニメメカなんてものは立体としてインチキでも全くオッケーなのだとあたしは思っておりますし。



 さて、↑上図があたしの作ったダグラムの頭部モジュールです。
 一見単純な箱組のデザインですし、特に3D化が厄介とも思えません。しかしさにあらず、ダグラムのデザイン上の不整合はこの頭部に集中しています。以下、具体的に説明してみましょう。



 
(1)

 まずは頭部形状そのものの矛盾について書きます。しかしお断りしておきますと、これは厳密には矛盾とは言えません。と言いますのも、設定画の解釈によっては立体としてちゃんと成り立ってしまうからです。
 問題は、設定画が様々に解釈できてしまうあやふやなモノであることです。よって過去に作られたプラモ商品などにも様々な形状のモノがあるようです。順を追って説明します。


 まず上図を見てください。
 ダグラムの頭部というのは、正面から見ますとこのように上に向けてすぼまっています。つまり断面が台形となっているわけです。
 しかし後方から頭部を見ますと、このすぼまりがかなり小さくなっています。つまり後頭部では断面が長方形に近くなっているわけです。
 2D画の場合はそんなことは何の問題でもありません。線をねじ曲げて繋げれば済むことです。しかし3Dモデルを作る時には、断面形状の変形を合理的に解釈してやらなければなりません。
 この「台形→長方形」を再現するには、(あたしが考えるに)大きく分けて三つの方法があります。

(図A)

 まずイチバン簡単なのは上の(図A)のやり方です。
 図の(1)は頭部前端、(2)はキャノピー終端位置、(3)は頭部の終端です。
 つまりこのやり方は、頭部前端からキャノピー終端まで台形の断面を保ち、そこから上辺の幅を増して、頭部終端では長方形の断面にするというものです。
 設定画ではキャノピー断面にもテーパーが付いていますが、このやり方ならそれを再現できます。しかし頭部後方上部のバッスル(?)部分が扇形に広がってしまうのが難点です。

(図B)


 ではキャノピー断面を台形にしつつ、頭部後方上部が広がって見えないやり方はないでしょうか。無論あります。それが上の(図B)です。
 これはいわば(図A)とは逆の方法で、(2)から(3)にかけて台形の下辺を短くしてやります。結果終端の断面は長方形になりますが、(図A)と違って上部が不自然に広がって見えることはありません。
 しかしこのやり方にも欠点はあります。
 ダグラムの側頭部には、ちょうど耳のような感じでルーバーの付いたフェアリングがあります。これは設定画で見ると単純な長方形の断面になっているようですが(若干外側に丸くふくれていますが)、(図B)のやり方ですと(2)と(3)を繋ぐ面がねじれてしまうため、フェアリングの側面形状がやや不自然になってしまうのです。

(図C)



 それでは、というわけで、(図A)、(図B)両方の欠点を解消するための方法を考えてみます。それが上の(図C)です。
 このやり方は(1)から(2)にかけて上辺の幅増しを終えてしまい、(2)から(3)にかけての面のねじれを解消してしまおうとする方法です。
 やり方としてやや強引ですし、キャノピー終端での断面が長方形になってしまうわけですから、ちょっと設定とは違ってしまいます。
 けれども耳フェアリングの形状は変にねじれなくてすみますし、頭全体のシルエットが設定画に最も近い雰囲気に見えるのが良いところです。


 ただこのやり方には一つだけ大きな欠点があります。
 下図を見て下さい。





 ダグラムのキャノピー上面にはヒンジの付いた小さなドアがあります。いわば天窓のようなモノですが、(図C)のやり方ですとこの天窓の形が不自然になってしまいます。つまり(1)から(2)にかけて上辺の幅増しをするため、それにつれて天窓の形が台形になってしまうのです。
 これでは明らかに設定画と雰囲気を違えてしまう(設定画では天窓は長方形)ので、方法としてちょっと採用しづらく思ってしまいます。
 けれども上記のような捨てがたい長所もあるため、短所には目をつぶってこのやり方を採っている立体物も多いようです。最近道ちゃんこと松田道諭樹氏からいただいたミニフィギュアでは、おしなべて天窓が台形になっていました。




 かようダグラムの頭部は、明らかな矛盾というわけではないですが、3D化に際して色々と制作者の頭を悩ませるブツであることがお分かりいただけたかと思います。
 おそらくデザインをした大河原氏はこれらの問題点に気が付いていなかったと思われますが、上でも書きましたとおり、だから大河原氏のデザインがダメだとか仕事がいい加減だなどと言いたいのでは全然ありません。天才の絵描きさんならともかく、大抵の人間の感覚では、全く矛盾のない立体物を頭の中で創造することがかくも大変であり、また我々が漫然とアニメロボの設定画を見ているだけでは気が付きにくい不整合がたくさんあるという事実を指摘したかったのです。
 実際あたしもダグラムを3Dで作るまではこういうチマチマしたことに全く気付かなかったわけですが、例えばロボットのプラモを設計したりしている人は、きっとこうした問題と日々格闘なさっているのでしょうね。


 **(ちなみにあたしは、最終的に(図B)の方法を、その短所が目立たないように調整しながら対処することにしました。)





 
(2)

 では次に、頭部の形状そのものと言うより、その機構上の問題点というか疑問点について書きたいと思います。それは
「果たしてダグラムの頭部って回転するのか?」という疑問です。

 デュアルマガジン誌によれば、ダグラムのプラモには頭部が回転するものがあったようですし、アニメ劇中でも頭部を旋回している(ように見える)シーンは何度も出てきます。
 世界設定から言っても、デロイア星では計器操縦が難しいということになっているので、視界確保のためにコクピットを回転させることは理に適っているかもしれません。実際ラウンドフェイサーなどは、劇中でもグリグリ頭部を回転させて索敵を行うのです。


 しかしダグラムの頭部が左右にスイングするためには大きな問題が一つあります。それは戦闘室が胴体に半埋め込みになっていることで、ために上部構造に当たる頭部外殻だけを回すことが出来ないのです。
 この構造をそのまま再現しているデュアルモデル(当時発売された完成トイ)などは当然ながら頭部回転が不能になっているそうで、ですから合理的に解釈すればダグラムの頭部は回らないというのが正解にも思われます。
 

 それでは劇中頭部が回転するシーンなどは、あくまでマンガ的なデフォルメ表現に過ぎないのでしょうか?実はそれほど事は単純でないから面白い。


 3D化に当たって色々調べたり試したりしてみたのですが、結果あたしなりに出した結論から言わせていただきますと、
「設定画からすると確かにダグラムの頭部は回転が可能だが、しかしその設定画がそもそもウソ八百」ということになりそうです。以下にその理由を説明します。


 まずお断りしておきますと、上で書いた「設定画」というのは番組開始当初に発表されたものではなく、ストーリー中盤に追加で起こされ、発表された(らしい)ものを指します。


 ボナール市をめぐる攻防の最中、クリンら太陽の牙の面々は、やたらと目立つダグラムを分解輸送することによって連邦軍の包囲を突破しようとします。このためダグラムをモジュール毎にバラした設定画が描かれ、劇中で使われたわけです。
 この設定画を見ますと、ダグラムの頭部はターレット様の台座に乗せられ、それごと胴体からスッポリと抜けるようになっています。(↓下の略図を参考)

こんな感じ



 胴体にはめ込んだところを上から見ると↓下図のようになるわけです。




 なるほどこういう構造であれば、ターレットごと戦闘室を回転させることが可能でしょう。つまり頭部は回るわけです。戦車で言えば、ちょうど砲塔バスケットのような構造と言えるかもしれません。


 しかしこの構造(設定)には、アニメ絵としてはともかく、立体として成立させるには看過できない瑕疵があります。


 ダグラムの頭部というのは、戦闘ヘリをモチーフにしていることもあって、極端に前後に長い形をしています。それ故、胸の上にある台座の部分も縦長になっていて、頭部はそこにピッタリ収まる形で載っています。
 ところが、上の図を見ればお分かりでしょうが、円というのは当然縦横幅が同じですから、円形ターレットに頭部に載せるとなると、台座の横幅に対する円の直径分しか頭部の前後幅を取れないことになってしまいます。つまり構造上、頭部がひどく小さくなってしまうのです。

 全身のプロポーションにすると
↓こんな感じ。



 ↓つか誰だよお前、みたいな。


 というわけで、設定では確かに頭部が回転可能なんだけど、その設定がそもウソ八百と書いた意味がお分かりいただけたかと思います。本来の立ちポーズの設定画と両立不能なわけですから。


 まあダグラムってメカは、有名な朽ちダグポーズを再現することだって設定画のままなら絶対無理ですし、そも関節可動なんてことがほとんど顧みられていなかった時代の産物なんですから、この程度の不整合をとやかく言うのはやはり野暮でありましょう。しかし頭部云々というのはこれまであまり指摘されてこなかったことですのであえて書いてみました。


 ガンダムのように、今日なお新作のプラモデルが発売されている作品は、サンライズやメーカーさんによってどんどん新しい、合理的な新設定が作られていますし、デジタル3D化の際にはそれらを参考にすることも出来ますが、ダグラムのような作品の場合は自前でフォローしてやる他ありません。
 それはマイナー作品を3D化する上でのしんどさである反面、形や構造を自分なりに解釈し、再構成するという大きな楽しみでもあるように思います。




 
・補遺

 本稿に関して、道ちゃんこと松田道諭樹氏からプラモデルの資料をいただきました。

 どうやらタカラがプラモ用に考案したオリジナルの設定らしいですが、頭部の旋回と外観とが両立できるような構造になっています。詳しくは下の図版をご覧下さい↓

 







 残念ながら、この構造ではフットバーのスペースが無くなるため、3Dモデルにそのまま採用するには難があります。しかし玩具用のギミックとしては十分以上に巧みなものと言えると思います。


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