デストロイド・スパルタン

 今回扱うメカ「デストロイド・スパルタン」は、言わずと知れた「超時空要塞マクロス」に登場する脇役メカであるけれど、設定が発表された当初、あたしはこれを敵方の兵器であると思いこんでいた。がしかし、これは他の多くのアニメファンも同様だったのではないだろうか?
 なんとなれば、デストロイドシリーズは、揃いも揃ってどう見ても悪役面だからである。トマホークの目つきの悪さなんか、ほとんど街のチンピラですよ。



 さてスパルタンは、あたし的には、何となく四式戦「疾風」というイメージがある。何だそりゃと思われるかも知れないが、だってそうなんだもん。(^^;)
 設定によるとスパルタンは、第一次デストロイド整備計画機の中では、唯一副動力系を持っていない。つまり一基のエンジンで全ての出力をまかなっているわけである。
 これに対してトマホークだとかディフェンダー等いわゆる04シリーズは、上半身と下半身を別々のエンジンが動かしている。



 スパルタンは格闘戦用のデストロイドであるから、全身が有機的に繋がって機動しなければならず、そのため単一動力系という設計になったのだろう。しかしこれは技術的には非常に困難で、そのため開発が遅れ、配備後もその複雑なメカニズムには故障が絶えなかったと解説されている。
 つまりスパルタンは技術的理想主義の所産であって、戦場では必ずしも歓迎される兵器ではなかったのだ。


 
 あたしにとって、スパルタンのそんな駄々っ子ぶりが、まさに「疾風」を想起させるのだ。
 奇跡の高出力エンジンと呼ばれた「譽エンジン」を積み、「大東亜決戦機」とまで期待されながら、結局は故障の連続でろくな稼働率を発揮できなかったヘッポコ機と、この期待外れのデストロイドとは、どこかイメージが重ならないだろうか。
 もっとも統合軍兵器局には高性能機を是が非でも配備しなければならないという事情はなく、あくまで技術屋のワガママによって生まれた機体であるから、「疾風」のような悲壮感はスパルタンには無縁ですけどね。



 ところで、こういう凝りに凝った、しかし本質的にはどうでもいい裏設定がピッチリ用意されているのが「マクロス」という作品の特徴だけれども、それは取りも直さず本作の「カタログアニメ」たる本質を良く表していて、「デストロイド」なるメカニック群はさだめしその象徴と言えるだろう。



 つまり、例えばガンダムであれば、最初に骨格たるストーリーがあり、伝えるべきテーマがあって、その要請によってキャラだとかメカニックだとかが設定される。
 しかしマクロスではその逆だ。
 物語と関わりなくメカニックがあり、キャラがあり、それらのチマチマした履歴だのビジュアルイメージだのが最初から用意されている。
 当時ゆうきまさみが「メカフェチとロリコンと設定マニアの意志の集合体」と揶揄した通り、元々文芸作品を作るつもりがなく、その能力もないスタジオぬえによる「設定ごっこ」の副産物、それが可哀相なヤラレメカ、デストロイドシリーズだったのだ。



 まあそういう事情を抜きにしてメカデザインとしてのスパルタンを見ると、結構好きなフォルムではあったりします。
 制作スタッフにもそれなりに人気があったらしく(疾風と呼ばれていたかどうかは知らないが(^^))、リガードと一騎打ちをするシーンがあったり、主人公が乗り込んで活躍するエピソードもあったりします。
 だいたいワンカットのみでドカンパーなデストロイド群の中にあっては、比較的恵まれていたメカニックであったと言えるでしょう、スパルタン。


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