シチリア島ぐねぐね旅行記(2)


 シチリアの3つの岬のうち、西側の頂点がエリチェという街です。パレルモからこの街を目指して移動することにしました。途中の観光地を訪れながらジワジワ進むのですニャ。



 ここでちょっと書いておきますと、シチリアというのは地中海に浮かぶ最大の島であって、故に東西南北の様々な勢力が衝突し交流する舞台となりました。
 ここを支配した民族(勢力)は、大まかなところでも、フェニキア、ギリシア、ローマ、イスラーム、ノルマン(バイキング)、スワビィア、スペイン・・・と数限りなく、だから残されている様々な文化遺産はそれらの特色がまじぇまじぇゴハン状態となっているのが特徴です。ある意味文化のフランケンシュタインと言いますか。
 街にはどう見てもイスラーム寺院としか見えない建物がズビズバ建っていますが内部はバロック調の教会だったり、かと思えばいきなりギリシア神殿の遺跡がドカンと現れたり、人々はアラブともイタリアともノルマン風ともつかない料理を食べていて、イタリア語だけでなく英語は喋るわフランス語は喋るわスペイン語は喋るわ、オマケに土産物屋は日本語まで流暢に喋るわってんだから頭グラグラです。どこやねんここ。



 パレルモを出て最初に訪れたモンレアーレという街も、そうしたシチリア文化の特色を色濃く反映した古都であり、ドゥオーモ(大聖堂)は教会建築にアラブの建築技術が見事に融合しています。シチリアにおけるノルマン芸術の最高峰と謳われるだけあって、あたしはパレルモのノルマン宮よりもずっと美しいと思いました。

↑モンレアーレ大聖堂内



 内部はモザイク装飾が素晴らしいのですが、大変暗くて見通しが良くないです。そこで観光客向けに照明装置がついていて、小銭を入れると数分間点灯するようになっています。こういう俗っぽい仕掛けはヨーロッパの教会には結構多いのですが、
 「そうかそうか、ここの神様は現実主義者よの〜」
 なんて笑っていたところ、それまで快晴だった空がにわかにかき曇り、バケツをひっくり返したような雨!きらめく稲妻、とどろく雷鳴〜♪(実話)
 千人以上の観光客がドゥオーモ内部に降り込められて外に出られないという事態になりました。怖いぜ神。皆さまも気を付けましょう。



 モンレアーレとエリチェの中間くらいにあるセジェスタという街は、また雰囲気が違って、ギリシア建築遺跡を中心とした街です。
 ここには巨大な神殿遺跡と劇場遺跡があり、そのどちらもすごく立派。
 シチリアの遺跡はギリシア本土のモノと違って石灰岩で出来ているので痛みが激しいですが、その威容は歴史の重みを十分に伝えてきます。(多分)
 セジェスタの遺跡は丘の上にありますが、季節が春ということもあって周囲には色とりどりの花が咲き乱れ、まるでおとぎの国に迷い込んだみたいです。これで観光客があふれていなければいうこと無いんですけどねえ。ちと贅沢かニャ。

↑セジェスタのドリス式神殿(紀元前5世紀のもの)



 さてそうした街にチマチマ滞在しながらエリチェに近づいていきますが、あたしは勉強していなくて全然知らなかったんだけど、この街ってすごく高い山の上にあるんです(まんまエリチェ山という)。普通の港町かと思っていたのでビックリしました。



 街に入るとその雰囲気は一種独特です。狭い石畳の道が縦横に張り巡らされていて、ゴシック調の建築がギッチリ建っている。観光客は多いのですが、街全体は不思議な静謐に覆われている感じです。あたしはその趣がとても気に入ってしまいました。
 街の外縁からは素晴らしいパノラマが目に出来ます。すぐ下にあるトラーパニやマルサラの街はもちろん、エガディ諸島や、反対側のサン・ヴィート岬を一望です。高地なのであたしが滞在している間は霧の出る日も多かった(またそれが趣がある)ですが、良く晴れた日には遙かチュニジアまでを遠望することが出来るそうです。

↑エリチェより東側を望む。左はティレニア海。



 この街の弱点の一つは水で、何しろ山の上ですから使い放題というワケにはなかなかいきません。街にはホテルがたくさんありますが、どこもバス事情はイマイチのようです。あたしのように必ずバスタブを使わないと気が済まないという人にはちょっとツライですね。


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