No.50
このアニメはこう見やがれってんだ!(13)
毎度世界一ノンタイムリーなアニメレビューにゃ。
書き終わってから気が付いたけど、今回はあからさまな萌えとかえちぃ系の作品が1つも入っていない。何と珍しいことでしょ〜。
まあそれだから居住まいを正して見なきゃならない立派な作品が揃ってるかというと全然そんなことはないんだけどね。
オーバーマン キングゲイナー
富野由悠季御大がWOWOWオンエア向けに手がけたアニメで、氏の近年の作品としては(特に若年層に)破格の好評を持って迎えられた感がある。
そんなに面白いのなら見てやろうじゃないかと今さら視聴してみたんだけど、あまりの安さとつまらなさとイタさに危うくビデオのリモコン持ったまんま脳溢血で別の世界へ行くかと思ったぞ。あたしのような超インテリに不測の事態があったら、世界や時代の一大損失じゃないか。一体キングゲイナーに責任取れるのかよう。ええ、何とか言ってみろよ富野さんよう。
まあ何がつまらないと言って、ぶっちゃけ「全てだ!!(車周作風)」
ストーリーは超絶アホらしい上に平板で退屈の極み。キャラは例によって全員白痴かウルトラキ○ガイで、と言って濃くもなくシャブシャブの薄味。
細かい演出もいちいちセンスを欠く。分かり切ったシチュ説明やキャラの心情を修辞様に配する富野セリフのウザさも、いい加減この辺りが限界であろう。正直聞くに堪えん!全部全部全部ダメダメだ!
正味のところ、富野氏の近作を楽しむにはあたしは頭が良くなりすぎたし、逆に、持って生まれた素晴らしいセンスが枯渇しきった富野氏は、元々のオツムの出来の悪さだけが際立ってしまっていて、つまりもはや、この人とあたしの間には、文芸作品を与え、与えられるという関係が根本的に成立し得なくなっている。幼稚園児の作ったオハナシを、大人がまともには聞く気にならないのとおんなじだ。
ホントに面白いものを見ずに育ったが故、こんなものをそれなりに楽しく消費してしまうお子様たちが心底可哀想だよ。
「まおちゃん」のトンチンカンな批判なんぞしてないで、今すぐバイストン・ウェルへでも隠遁してくれ、富野氏。それがこの世のためだったらためだい!
追記・オーバーマンのデザインはそこそこに斬新で悪くないが、それぞれのオーバースキルがあまりに陳腐でゲンナリした。ここをもうちと工夫すれば、戦闘シーンの駆け引きが面白くなり、それがひいてはドラマ全体に躍動感を与えたと思うのだが。
追記2・ちなみにオープニングのアナ姫だけはとっても可愛くて良かったと思います。これだけを楽しみに毎回見ていたり。
ガンパレード・マーチ〜新たなる行軍歌〜
大人気ゲームのアニメ化で、「ガンダム0080・ポケットの中の戦争」の高山文彦氏がシリーズ構成を手がけている。
オンエア中の評判はサッパリで、原作ゲームのファンには「あんなものはG・P・Mではない」と、原作ゲームを知らない者には「世界観が分かりにくく、しかも退屈」と、双方からそっぽを向かれ、ダメを出されてしまった感がある。
しかしあたし個人がようやく見てみて感じるに、本作自体が面白いかどうかはひとまず置くとして、少なくともこれが「G・P・Mではない」とまで誹られるのは気の毒に思えた。いやむしろ、原作の雰囲気をまあまあ良く伝えている作品じゃないかとまで感じちゃったのは、あるいはあたしがゲームの熱烈なファンではないからだろうか。
そも原作たる「高機動幻想ガンパレード・マーチ」において、プレイヤーは、人類が幻獣なるモンスターと激戦を繰り広げるパラレルワールドに暮らし、その絶望に満ちた異世界感覚を楽しむことは出来るけれど、マクロ(EX・戦争や世界の趨勢)、ミクロ(EX・友人、恋愛関係)を問わず、この世界での事象が何処へ終着するのかは手がかりすら得られずじまいだ。
それは「異世界生活シミュレーション」というゲームの本体部分をピュアに提示するためにわざとそう演出されているわけで、つまりは制作者の意図に適っているんだけど、見方を変えれば文芸作品として何も語っていないとも言える。(ネットその他で開発者の語る裏設定を読むことが出来るが、オツムの弱いエヴァヲタを想起させる寝言の類で辟易した)
これをアニメ化するについては、薄弱たる文芸部分を補完して「オハナシ」に仕立てるという工夫が必要だったはずだが、しかし高山氏は、その作業を(意図的にか)最初から全く放棄している。
怠慢と言えばそうだが、はしなくもその演出が、ゲームの雰囲気を再現するのに一役買っている。つまり「何も語っていない」という原作の本質を、このアニメは分かりやすく絵で見せているのだ。
それが原作者サイドの(安くなるから余計な解釈をするなという)意向であるのか、あるいは高山氏なりのアイロニーででもあるのかは分からないが、結果出来上がったモノはそこそこに「ガンパレード・マーチ」になっているから面白い。(壬生屋戦死の素っ気なさなど、あれが他の誰であっても構わないという伝でとりわけ原作ライクだと思う。ウチの壬生屋も初プレイですぐお亡くなりになっただよ)
アニメ作品としては完全に落第だし評価も出来ないが、ファンへのサービスフィルムと割り切れば、まあこんなのもあって良いでしょうというねじれた断を今回は下しておきます。
ちなみに、せめてオチらしく見えるモノを配しておかないと一見客にはあまり不親切と思ったか、はてさてこれもファンサービスの一環と割り切ってなのか、後半はいかにも中途半端なラブコメ展開がオマケ的にくっついてるけど、ここは高山氏の不器用さが若い恋人達のマンガチックな純情ぶりと上手くシンクロしている感じで、あたし的に好印象だった。
ひたむきに焦がれ合いながら、しかしただ手をつかねて悶々と日々を送る子どもたちのベタ描写は、確かにくだらないしつまらないけれど、バカだねえと冷笑する気にまではなれない。
まあ、もう二度とこんな不細工な恋愛には縁の無いだろうあたしの感傷なんだろうが、最終回、歩道橋を駆け上がってくる舞ちゃんのすがるような面持ちには胸が熱くなりました。
追記・作画及び背景美術はなかなか高レベルで、しかも最後まで大きな崩れがない(「あずまんが大王」の和田崇氏が動画プロデュースをしていますな)。こういうカッチリしたお仕事は文芸とは別に評価するべきだと思う。でもでもののちゃんがちっとも活躍しなかったのはめーなのよ。あ〜それからテーマソングはベタながら爽やかな雰囲気で良いと思いました。
WOLF'S RAIN
心に牙を持つ者たちの物語。
あたしの大、大、大キライな「カウボーイ・ビバップ」の信本敬子と岡村天斎コンビの手になるもので、内容の陳腐さは相変わらずだけれど、核となるドラマがシンプルで力強い分、あたし的には本作のが好印象だった。
まあ作品としての絶対的価値は取るに足りないと言って良いだろうし、演出上の難点は大小山盛りだし、メインライターの信本氏と他のライターさんとの力量差がありありで、何だかプロアマの合作みたいなデコボコした印象だしと、クサすつもりならばいくらでもクサせるんだけど、少なくとも最終回まで視聴者の興味を引き付けておくだけの力は持っていると思うし、何より「良い作品を作りたい、作ろう!」というスタッフの熱意、誠意が画面から感じ取れることを評価したい。
こうしたオリジナルの長編シリーズ、しかも萌えでなくストーリーで魅せようという真っ当な企画は今日日貴重であって、だからそういう絶滅危惧種を出来れば保護したいなあという無意識のバイアスがあたしに作用しているような気もしないじゃないが、まあたまにはそんな安い情の勝ったレビューもあって良かろう。育ちの良すぎるためか、どうもあたしはヒールに徹しきれないようで照れ臭いぜ。
追記・川本氏の劇画調のキャラデザは、「ビバップ」なんかでもそうだけど、このくらい高密度、高レベルの作画が為されるとスゴク活きてきますね。あたしの趣味からは完全に外れるけれど、こういう気合いの入ったビジュアルワークはやっぱり見ていて気持ちがイイです。
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