No.19
宇宙猿人ゴリ日記・1
もう二年ほど前のことになるが、大学の先輩であり、あたしが勝手に創作上の師と仰いでいる米金敏三博士に、「
宇宙猿人ゴリ」をダビングしてもらって視聴したことがある。
ご承知の方もおられるかと思うが、その内容のひどさたるや、もはや人類に対する犯罪じゃないかってほどひどく、あたしはもう作品を「見る」というよりは作品と「戦う」というノリで視聴を続けたのであった。
当時その拷問のような状況を仲間内のパティオで随時報告していたのだが、先日その過去ログをチェックしてみると意外やこれが面白かったので、ここに再録してみます。
やや散漫で分かりづらい所もあるかと思いますが、まあ気の置けない仲間内の与太会話のノリとして読んでくださいませ。
宇宙猿人ゴリレビュー・その1
ゴリの2から5話をまとめて見た。いやーぶったまげたなあ。
あんな同人映画も裸足で逃げ出すような作品を、公共の電波で流しちゃっていいもんだろうか。しかもLDにして売っちゃうなんてほとんど犯罪だぞ。
そもそも脚本の支離滅裂ぶりはどこをどう突っ込んでいいか分からないほどだ。しどい作品。藤川さんって若いころからアホだったんだなあ。見るヤツもスゴイが。当時の視聴者ってみんな目と耳が不自由だったんだろうか。
米金センセから聞いてはいたが、獣人ラーが巨大化する話は、もうめまいがするほどひどい。
いきなり巨大化して夜の新宿へやってくるラー。ビルによじ登る彼を自衛隊機が攻撃しようとする。
「ミサイルをぶちこんでやる!」
ラーの運命やいかに?ってところで急に場面が切り替わり、いつの間にか夜はすっかり明けているがラーは相変わらずビルの屋上に腰を下ろして足をブラブラさせている。
自衛隊機はどこへ行っちゃったの?パイロットのセリフは何だったのよ?
そこでラーは唐突に、
「ええいスペクトルマンは何で来ないんだ?(まったくだ)こうなったら新宿を徹底的に破壊してやる!」
とか何とか言って今まで腰を下ろしていたビルを殴りつけ始める。するとビル内の会社で仕事をしていた人々はキャーなどとわめいて逃げまどう!
なんかもう固まっちゃいそうな展開だ。会社員たちは、ラーが腰掛けているビルにのうのうと出社してきたばかりか、何事もなかったかのように仕事をしていたのか?脚本家は何を考えてるんだ?
これより前の話でラーがいきなり都会の雑踏の中を歩くシーンがあり、彼は
「何で誰もオレに注意を払わないんだ?(まったくだ)」
といぶかしがる。これと考えあわせると、脚本家は都会の他人に対する無関心ぶりを描きたかったのか?
でもなあ、怪獣が居座ってる自社ビルに出勤するっていうのは、「無関心」というのとはちょっと違うと思うがなあ。
それとなあ、蒲生譲二、何とかならんかあれ?
演歌歌手みたいな名前と髪型はまあいいとして、脳が不自由っていうのは困ると思うぞ。
脚本家は多分、スペクトルマンのキャラを強調するために「普段は三枚目」っつーお決まりのパターンを狙ったんだろう。しかし三枚目をはるかに通り越してしまったものすごいキャラに、一筋の涙が頬を伝う。ハッキリ言って、役者さんの人権侵害レベル。
あれじゃあ故郷のおっかさんに
「オレの出てる番組見てくれよな。」
とも言えないぞ。
「あのドラ息子がはあ、芸能人がごとテレビさ出ばってはあ。晴れ姿を見てやってくろ、おとっちゃ。」
なんて嬉し泣きしながら、早世した父の遺影を胸にブラウン管に向かった母ちゃんが泡吹いて死ぬぞ。
一連の怪奇事件をして、
「ボクにはもう犯人の見当がついてるんです。」
と言い募る蒲生。
「これはE惑星からやってきた猿人ゴリの仕業です。信じて下さい。」
って、どう信じろと言うのだ!何処だよE惑星って、誰なんだよ猿人ゴリ、と誰か突っ込むかと思いきや、
「うーむ考えられないことではない…。」
と議論を始める公害Gメン。
何やらもうシュールの香りすら漂う展開に、あたしのおつむはノーフューチャー!ヘルプミーポパイ!
宇宙猿人ゴリレビュー・その2
「宇宙猿人ゴリ」公害人間編を見た。
脳がツッコミ疲れたぞ。誰か助けてくれ。
公害人間(伝染性のある毒ガスに犯されてしまった公害病患者)に対する蒲生の物言いがまずスゴイ。
「あなた方は恐怖公害人間です!」
だもんなあ。
どこぞの小賢しい省庁のように情報を秘匿せず、キチンと宣告するその姿勢や良し!しかし本人に対して「恐怖」はないだろ「恐怖」は!
「恐怖エ○ズ人間」とか「恐怖ア○ピー人間」とか言ったら、今日日人権問題だぞ。ああ社会って日々進歩してるんだなあ。
そんでもってその恐怖公害人間に対する策が、住んでいる団地の扉を釘付けにするっつーのは何か違うんじゃないのか。公害人間ってのは台風か!
スペクトルマンなんか、それでもたらんと思ったか扉を溶接しちゃうもんなあ。ほとんどエイリアンみたいな扱いの公害人間だ。
そのスペクトルマンだが、フワフワと宇宙を漂って人工衛星にブチ当たるわどこぞの遊星に漂着するわ、まるですごろくだ。
エンタテイメントの世界には佐渡島くらいの広さの宇宙はゴロゴロあるが、この宇宙は小学校の校庭くらいの広さらしい。かと思えばたどり着いた星には果ても見えない砂丘が広がっていたりして頭がクラクラする。(何処までロケに行ってるんだ?)宇宙より惑星の方が大きいなんて、エスエフだなあ。
ところで公害人間を殺せず、さりとて野放しにも出来ない蒲生の葛藤は、立派にドラマとしての資格を持っている。しかし通して見てみると、あまりにハニャーな演出に、何も心に迫ってくるものがないのだ。トホホ。
最たるものはその解決法であろう。
「X線とW線のカロリーを上げたスペクトルフラッシュを照射する」
とは何ぞや?
よくは分からないが、これが「科学」なのであろう。スゴイなあ科学。そう思って見ると何か身体に良さそうな気もするから不思議だ。
お話し変わって公害Gメンだが、事件発生の報を受けた大平さんが
「出動だ!」
と言うと、隊員の一人が
「えーっ、勘弁して欲しいですタイ。今日は日曜日ですタイ。」
などと言う。
あのー、そこはGメンの事務所であって、そこにいるあんたたちは、つまり出勤してきてるんじゃないの?いまさら「日曜日ですタイ。」もないもんだ。
いや、あの心底イヤそうな顔からすると、あそこは事務所には違いないが彼らの住居でもあるのだろう。緊急事態に備えて、普段からあそこで共同生活をしているわけだ。そりゃあ勘弁してちょうだい。
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