No.16

モンスター佃煮レビュー・2


 先日このコーナーにおいて「モンスター佃煮レビュー」なる駄文をアップしたが、その後つらつら考えてみると、そこで取り上げたもの以外に、去年は色々としょうむないモンスタームービーを見ていたことを思い出しました。
 で、せっかくなので第2弾として、モンスタームービーの在庫一掃ひとくちレビューをすることにします。
 どれも単品では売り物にならないのは前回と同じなので、まあキズモノの福袋という感じで気軽にお読み下さい。

キングコブラ


 WOWOWでオンエアされたから見たのだが、脚本のしょうもなさとSFXのチープさにゲンナリした。
 そもそも「キングコブラ」というタイトルからして脱力である。確かに恐ろしい生き物ではあるかもしれないが、そこらの動物園でだって飼育されている普通のヘビじゃん。
 「アナコンダ」もそうだったが、もうちょっとハッタリのきいたタイトルにした方がいいんじゃないのか、ヘビ映画。



 さてストーリーはというと、DNA操作によって超巨大化したキングコブラが田舎町をパニックに陥れるというベタなもので、立ち向かうのは冴えない風貌の動物学者と、彼が招いたヘビ捕り名人・・・って、木曜スペシャルの
ツチノコ特集じゃないんだからさあ。
 しかもこのヘビ捕り名人(ちなみにパット・モリタ)、名人らしいところはいささかもなく、でっかいハサミのような捕獲器を持ってウロウロ走り回り、キングコブラにガブガブ噛みつかれているだけ。
 「何度もヘビに噛まれているので毒が効かない体質」というふれ込みなのだが、そりゃ単なる
ノロマのタフマン自慢なんじゃないのか?



 それでもヘビのプロップが良くできていればオッケーなのだが、「アナコンダ」のようにCGを駆使する予算も能力もなかったのか、キングコブラはほとんど頭部しか出てこない。お前は腹話術の腕人形か!
 結局キングコブラはパイプ様の罠に誘い込まれ、ガスで退治されてしまうのだが、何の手違いかそのガスは単なる麻酔ガスで、恐怖は何ら去っていないという、鼻から脳が出そうなオチが付く。
 まあ一銭にもならないヘビ退治に命を懸ける主人公には感心するが、後片づけはキチンとして帰りましょうね。ヘビ一匹眠らせるだけの映画を1時間半も見せられる視聴者はたまったもんじゃないぞ。

UMA・レイクプラシッド


 心霊だのUFOだのという与太話を全く信じていないあたしであるが、巨大なUMA(謎の未確認生物)というのは世界中に何種類かいるんじゃないかと思っている。特に海棲のそれは。
 ごく最近発見されたメガマウス(7メートルを越す巨大な深海ザメ)の例を引くまでもなく、やっぱ海というのは、巨大生物が身を隠す余地が今少し残されている気がするのだ。



 さて映画「UMA」であるが、これは海棲のモンスターではなく、アメリカの湖にモンスターが出現するというオハナシ。
 この手のB級ムービーが大好きなあたしはワクワクして鑑賞したのだが、そのあまりのくだらなさにガッカリというよりはビックリさせられた。いや〜、シドイ映画もあったものである。



 現れるモンスターはUMAでも何でもなく、単なる巨大なワニである。だもんで主人公たちもドラマチックなリアクションなど取りようもなく、
 「あっワニだ」
 「本当だ。大きいなあ」
 って、
アイアンキングの登場シーンじゃないんだからさぁ・・・。
 ワニ君も、華がないキャラであることを気にしてか、馬にかぶりついたり牛にかぶりついたりクマにかぶりついたりヘリコにかぶりついたりとなかなか熱演するのだが、何せワニなのでちっとも怖くない。
 まあ元々この映画は「レイクプラシッド」という地味な原題のワニパニックで、「UMA」なんちゅうタイトルをでっち上げてセンセーショナルに売り込もうとした日本の配給元がけしからんと言えばそうだが、そも映画そのものがつまらないことも確かであって、ブリジット・フォンダも何を考えてこんなジャンクムービーに出演しているのか。名優一家の家名を汚しちゃうぞ。



 ところでこの映画、ハッキリ言って、
ウルトラマンの「謎の恐竜基地」の焼き直しなのであるが、何故そうなのかはビデオ等でチェックして確かめてね。

パラサイト


 往年の傑作クリーチャームービー「マックィーンの絶対の危機(ザ・ブロッブ)」を、現代風にリメイクしようとしたという意図がミエミエの凡作である。
 同じ素材を正面切ってリメイクし、しかも新しい魅力をふんだんに盛り込んだ「ブロブ」や、オドロでなく、明るく楽しいエンタテイメントとしてクリーチャームービーを再生してみせた「トレマーズ」等とは雲泥の差だ。まあしかし、これはこれで肩の凝らない娯楽作には仕上がっていますが。



 さて、「マックィーン・・・」、「ブロブ」、「トレマーズ」の三作に共通しているのは、それらが怪獣映画の形を借りた
「青春映画」であるという点だ。
 主人公たちは、大人社会への反発や、自己のアイデンティティをつかめないことへの苛立ちを胸に秘め、日々を悶々として暮らしている。そこへ投げ込まれた「モンスター」という非日常が、彼らを新しい価値観へと導き、社会成員としての一歩を踏み出させるのだ。
 彼らが見つけだすのは恋であったり友情であったり新たな自己であったりするが、モンスターは、まさに彼らが生まれ変わり、互いに結びつくための、
触媒や仲介者としての役目を果たすのだ。
 「トレマーズ」の、あの胸の熱くなる、しかし実に爽やかなラストシーンを見るがよい!怪獣でハラハラドキドキさせられた上に、あんな素敵で切ないメッセージまでをも贈られる観客は幸せである。映画っていいなあ、若いっていいなあ、人間っていいよなあ〜という気持ちにさせられる。



 その伝でいけば、本作「パラサイト」は、青春クリーチャームービーとして相当に力不足と言えるであろう。
 主人公たちは、パターン通りに反目を繰り返しながら同時に相互理解を深めていくのだが、彼ら同士の琴線がふと触れ合うその微妙な一瞬や、心のアヤが描き切れていない気がする。
 登場人物もやたら多くてゴチャゴチャしてるし、脚本の段階でもっと練りこめば、かなりマシな作品になったかもしれません。



 まあオハナシとしては古典的な侵略テーマのサスペンスなので気楽に見れますし、クリーチャーエフェクツも悪くないのですが、何か主人公たちよりも、毎度おぞましいロバート・パトリック(ターミネーター2のスライムポリス)のパフォーマンスだけが印象に残る映画になっちゃってる気がします。
 こういう気色の悪い端役を演らせたら、本当に上手いよ、この
変なオジちゃんは。


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