番外記事 キミは獅子吼(シシク)と叫んだか? |
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以前に「ストラダ5」のBDボックスを視聴し、ここで紹介記事を書きましたが、その時に購入したボックスがもう一つあります。 同じレーベルさんから発売されている「白獅子仮面」です! しかし両作品の購入動機には大きな温度差がありました。 「ストラダ5」に対しては「ハナシのタネに見てみようかな」という程度の気分でしたが、「白獅子仮面」は是非とも見てみたくて買ったのです。 決して「ついでにこんなのも買っとくか」みたいな、オマケ感覚での購入ではありませんでした。
ではあたしが「白獅子仮面」に強い思い入れがあるのかと言えば、それもまた違います。世代ではないので、内容もよく知らなかったですし。 ただ上映会等で何本か視聴して、カッコイイなと思った記憶があり、でもそれも昔のことなので勘違いかもしれず、いっぺんキチンと見てみたいなと常々思っていたんです。 今回、念願(?)かなって見てみた「白獅子仮面」の印象はと言いますと、良い部分、ていうかあたし好みの部分もたくさんありますが、でもクソつまんねーなオイ!というモノでした(^_^;) どうしてそう感じたか、「白獅子仮面」の良いところ、悪いところを挙げながら、紹介記事を書いてみたいと思います。
まず「白獅子仮面」の、あたし好みの部分を挙げてみましょう。 (1)白獅子仮面がドチャクソ強い! 白獅子仮面はモノスゴク強いヒーローです。どのくらい強いかと言えば、初期のザボーガーくらいクッソ強いです。 登場したが最後、敵がどんな攻撃を仕掛けてこようとビクともせず、ズンバラリンと相手を叩っ切るだけ。主題歌まんまです。 彼と互角に戦えたのはラスボスである火焔大魔王のみで、それでも相討ちに持ち込むのがやっと。 まさに無敵のヒーローであり、そうしたキャラ性はあたしの好みに合っています。初登場時のグレートマジンガーとかガンダムみたいなチートヒーローが好きなので。 (2)三ツ木清隆クンカッコ爽やか! 主役を演じるのは光速エスパーこと三ツ木清隆氏ですが、剣兵馬(つるぎひょうま)というおよそ何の陰影も奥行きも無い、ただ正義感が強いだけの脳天気なキャラに、毎度ただ爽やかなイケメンというだけの三ツ木氏がとても良く似合っています(まことに失礼)。 OPでは氏がキメ顔でニッコリ笑うカットが何度も挿入されており、まるで三ツ木氏のアイドル映画みたい。 また二丁十手をガンスピンのようにクルクル回すジャグリングアクションがとてもお上手で、シャーペンも回せないニブチンのあたしにはとてもカッコ良く見えました。 (3)楽曲が良い! 水木のアニキが歌う主題歌がカッコイイです。 サビの「スカッと参上、白獅子仮面」という歌詞もイイですね(ただ3番の「やるぞ世直し」という歌詞には「?」。別に世直ししてねえだろ白獅子仮面)。 EDの方は昔の唱歌みたいなノリだけど、使われてるイラストがコミカライズの名手・古城武司先生(故人)の手になるもので、それを見ているだけで楽しくなります。
次に「白獅子仮面」でゲンナリさせられる部分を挙げてみます。 (1)どうにもビンボくさい空気感 本作の制作環境については存じませんが、さぞかし予算がキツかったのかもなあと思わせられるチープ感が横溢しています。 それが最も端的に表れているのは、舞台となる江戸の街の雰囲気です。 ぶっちゃけ人が全然いません! ていうか大岡越前守の身内と部下以外はほとんど出てきませんので、百万都市お江戸が舞台だよ!という説得力をまるで欠いています。ヒマな学生サークルが、合宿先のお寺でお奉行様ゴッコをしてるみたい。 同じチープさを感じる作品でも、「赤影」なんかはそれが独自のナンセンスな面白みに繋がっているのに対し、「白獅子仮面」ではただただ貧乏くさいだけ。イヤだぞこんな廃村みたいなお江戸。 (2)敵(妖怪たち)が色々とショボい! これも(1)のように予算の関係なのかもですが、敵である妖怪の造型がとてもショボいです。 着ぐるみのようなモノはほとんど作られず、お面に着物やヨロイを着けているだけみたいなヤツばっかり。 演者さんの全身にワラ束をくくり付けただけの「ワラお化け」なんてのまでいます。もうナメとんのかと。ハロウィンの仮装のがまだお金がかかってそうだぞと。 一ツ目小僧に至っては着物すら着ておらず、もう早ただの変質者にしか見えません。 そうしたショボさを糊塗しようとしてか、妖怪は毎回ゾロゾロと5、6体が登場し、集団で白獅子仮面に襲いかかります。 それは他作品には無い新味とも言える一方、仮面ライダーで言えば怪人に当たる彼らをまるでザッコ戦闘員のように見せてしまっており、「ワシが今回のボスキャラじゃい!」とアピールするべき迫力を自ら稀釈してしまっています。エンタメとしてそれはマズいだろうと。 何よりヘンタイが数だけ増えたって嬉しくも何ともありませんし。 またビジュアルがショボいなら、せめて演出や演技で敵それぞれのキャラを立てるよう努力すべきなのに、それにも全く無頓着。 妖怪ならではの怖さや不気味さというものが毫も感じられず、スタッフのセンスやガッツの無さが透けて見えてしまいます。 同じ「河童」という怪物を描いても、セブンのテペト星人なんかは漏らしそうになるほど怖いのに、白獅子仮面の妖怪ガッパは何か笑っちゃうんだもんな。米とか盗んで喜んでるし。田舎の無人直売所荒しかよ。 (3)ドラマとキャラが真空すぐる! 上で剣兵馬に何の陰影も奥行きも無いと書きましたが、ジュヴナイルのヒーローというのは別にそれでも良いのです。 複雑なトラウマを抱えていたり、あれこれ悩んだりするよりも、正義のために戦う主人公だってことが、視聴者たる子供たちに分かりやすければそれで良い。 同じ伝で、大岡越前守や火焔大魔王も、それぞれ倒されたら困る正邪のラスボスとして、テキトーに存在感を発揮していれば用が足ります。 ただそれだけでは文芸が成立しませんから、そこは脇キャラたちが動き回ったり味を出したりしてドラマを作らないとなりません。 しかるに本作ではそうした作業が全く行われておらず、毎回「妖怪が現れたので白獅子仮面がブッ殺しました」というシノプシスを反復するだけ。 「チャー研」みたいな10分番組ならそれでも良いかしれませんが、ちゃんと30分の尺がある本作では、中身の何も無さ、カラッカラのペランペラン(by・ジャガージュン市)ぶりが際立ってしまっています。 故にラストの戦闘シーン以外は退屈極まりなく、あたしなどは全エピソード漏れなく、途中でコックリ船を漕いでしまいました。 聞くところによりますと、本作はなかなかスポンサーが付かず、しばらくお蔵入りとなっていた企画なのだそうです。 それはここで書いたような冴えない印象を、当時試写を見た方々も感じたからではなかったのかなあと想像します。
ではどう作れば、「白獅子仮面」はもう少しでも見られる作品になったのでしょうか。もっと言えば、どのような方針でシリーズ構成や脚本を整えるべきだったのでしょうか。 素人が何を生意気なとの誹りは受けましょうが、ちょっと思いついたアイデアを書いてみたいと思います。 すぐ上で書きましたように、「白獅子仮面」で一番マズいのはキャラとドラマが弱すぎることであり、それを改めるには脇キャラたちに活躍してもらわなければなりません。 逆に言いますと、脇キャラさえもっと動けば、作品の印象は飛躍的に改善したのではないかと思われます。 具体的に、どの脇キャラをどう動かすべきか? と言いましても、本作の脇キャラはたったの3人しかいません。 大岡越前守の妹・お縫(ぬい)ちゃん、同心の田所源八、その相棒の目明かし・一平です。 キモとなるのは当然、お縫ちゃんでありましょう。 彼女はせっかく紅一点のヒロインなのに、キャラ立ても活躍ぶりも今ひとつパッとしません。 勝ち気で、小柄や薙刀を獲物に妖怪に立ち向かう・・・・というだけの役回りです。中野竹子かよ。 ここはやはり、若いイケメン主人公を引き立たせるためにも、彼を好きになっちゃうというキャラにするべきだったでしょう。 兵馬のことが気になって仕方ないのに、ツンな性格故にそれを口に出せない。 せめてなるべく彼のそばにいようと、獲物を取って妖怪退治に助勢しようとするが、兵馬はお役目大事ばかりの野暮天なので、何かと足手まといになるお縫いちゃんが疎ましい。 いきおい素っ気なくあしらわれたり、迷惑そうな顔をされたりで、 (兵馬さんのバカバカ!縫の気持ちも知らないで!・・・・) とプンスカしつつ、恋慕の情は逆にますます燃えさかる・・・・・という現代風のキャラにしておけば、物語に躍動感が生まれ、視聴者である子供たちも感情移入がし易かったのではないでしょうか。 または極端なブラコンで、劇中序盤はお兄ちゃん(大岡越前守)大好き!という設定にしておくのも面白いかしれません。越前守を演ずる清川新吾氏はシブい男前ですしね。 日々武芸の稽古ばかりしている縫ちゃんを大岡越前守が心配し、どこかへ縁付けようとすると、 「縫はお嫁になど参りません!生涯側にいて、兄上をお守りしないとならないのですから!」 なんて言わせちゃったりとかね。 ところが同心隊隊長として配属された美しい青年・兵馬に一目でポーッとなり、そんな自身の心情に激しく動揺してしまう。 (私には兄上という大切な人がいるのに・・・・このような浮ついた心持ちになるのは、修行が足りないからですわ!) などとムキになってヤットウ稽古。乙女心はメンドクサイわ〜な展開にするのも楽しそうです。 さて一方、田所源八と一平のコンビはどう演出するべきでしょうか。 彼らは所謂コミックリリーフですが、その扱いはお縫いちゃん以上にぞんざいです。 毎回ただ漫然と市中をウロウロし、妖怪に出っくわして目を回すというだけの役回り。全く面白くないですし、キャラの深みもクソもありません。 また彼らは非常に善良な性格で、兵馬を慕い、信頼しきっています。 個人的にそういうキャラは嫌いではありませんが、ドラマに適当な緊張感を与えるためにも、彼らは兵馬と対抗する立場に立たせるべきだったでしょう。 対抗すると言いましても、源八らは腕っぷしが強いわけでも知恵が働くわけでもありませんから、土台まともに兵馬と張り合うことは叶いません。 出来ることと言えば、せめて少しでも早く妖怪事件を察知し、現場に駆け付けることぐらいなので、彼らはのべつに市中を見回り、兵馬に先んじようとします。 そうしたスタンドプレイ狙いを強調しておけば、彼らばかりが繰り返し妖怪に遭遇し、恐ろしい目に遭うという展開に説得力が出てきます。 ただこれだけですと、単にジャマくさいだけのキャラになってしまう恐れもありますから、コメディらしい根の善良さは、元通りのまま備えさせておくべきでしょう。 年下のエリートである兵馬に嫉妬や反発は覚えるが、それでも同心隊の仲間だぞという意識もちゃんと持たせておくのです。 具体的なキャラのイメージとしては、相手を出し抜こうとするあまりやたらと窮地に陥り、しぶしぶ兵馬に謝罪したり感謝したりしなければならないが、逆に兵馬が危機に瀕したときには、命がけでこれを救おうと奮闘したりもする・・・・みたいな感じでしょうか。 コミックリリーフとしての役割はそのままに、しかしドラマの一部を支えさせるわけで、これなら見ている子供たちも、ちょっと鬱陶しいけど憎めないし応援したい人たちだなという気持ちになると思います。 このように脇キャラたちを設定しておいて、彼らと兵馬が時に諍い、時に力を合わせて妖怪退治に励む様を描いてこそ、見せ場である殺陣も盛り上がりますし、30分もの13話という尺が活きてくると思うのですが如何でしょう。 以上、ポンコツお江戸特撮「白獅子仮面」の紹介でした。 寝ちゃうほど退屈だなどと愚痴りながら、何だかんだ改善案も書いちゃうあたり、あたしはやはり本作のことがちょっと好きなのかもしれません。 オススメは出来ませんが、皆さまももし機会がおありでしたら、1度ご視聴になられるのもよろしいかと思います。 |