となりの国のARISさんからの頂き物SS 
      
        
          
            作品タイトル/シン・伝説信号世紀巨神3 〜遺伝子スイッチ、ON! そして、お墓へ…?〜 
             
             
             
             
             
作者/となりの国のARIS 
             
             
             
             
             
公開日/2022年10月12日 
             
             
             
  
             
             
             
  
             
             
             
 ある日の夕方。都会の孤高な女子高生である楓子が、学校からの帰宅途中、信号待ちに立ち尽くしていたところ、近くのビル壁面高く、巨大な液晶画面に一人のキザな男性が映っているのに気付く。 
             
             
             
  
             
             
             
「あ、あの野郎は、あの有名な髭面は」 
             
             
             
  
             
             
             
 楓子が睨みつけるその画面の中の男性は、どこかの室内でテレビ撮影による取材を受けているらしく、取材の聞き手へと何やら語っている。 
             
             
             
  
             
             
             
「ぼくがエヴァンニシオンを制作した動機というのは一つです、つまり、イデンハゲオンを潰す、それだけです。かつて諸君の愛した輝きのイデンハゲオンは、社会現象になるほどの人気を記録したものの、その後、シリーズを重ねて駄作ばかりを出すようになり、悪い意味でのデカダン期へと落ち込み、今となってはもうアニメファンの多くからも見放されつつある、そんなイデンハゲオンには、そろそろご退場願おうということです」 
             
             
             
  
             
             
             
 楓子が怪訝な顔で視聴していると、ほかにもその画面を仰ぎ見ていた、となりの若者たちが駄弁り始め、楓子はそちらを見る。 
             
             
             
  
             
             
             
「あのアニメさ、エヴァンニシオンって、たしかギリシャ語で福耳という意味の言葉だよね。違ったっけ」 
             
             
             
  
             
             
             
「違うよ、福耳なのは監督の耳だよ。エヴァンニシオンの意味は丸耳だよ。そりゃ、丸耳も、まろやかで福のある耳ではあるんだろうけど」 
             
             
             
  
             
             
             
「ふーん。あの監督さん、もしかしたら、丸耳に憧れがあるのかもしれないね」 
             
             
             
  
             
             
             
「うーん。あの監督、グラサンかけてて気持ち読めないし」 
             
             
             
  
             
             
             
「目を隠しちゃって、照れ屋さんとかなのかね。マルチタレントのキノサカ・アキユみたいにさ。そのうち歌も始めて、レコード出したりするのかね、ママに食われた親父、なんて歌とかさ。で、あげく、政治家への立候補とかするのかね」 
             
             
             
  
             
             
             
「う、うーん。どうなんだろ。うーん」 
             
             
             
  
             
             
             
 となりの若者たちが駄弁っている。 
             
             
             
  
             
             
             
(最近の若い子の言う言葉は、あたしにはよく分からないわね) 
             
             
             
  
             
             
             
 高校生の身空でありながらすでに枯れつつある楓子は、そんなふうに思いながら、壁面の画面へと視線を戻す。 
             
             
             
  
             
             
             
 画面の中、相変わらず男性が取材の聞き手へと威勢良く語っているのを、楓子は、じっと見上げながら、 
             
             
             
  
             
             
             
(この人も、イデンハゲオン同様、いつか続編とか作りだすようになるのかしら。ハゲは遺伝するって言うし) 
             
             
             
  
             
             
             
 色々と自分の中に描き始める。 
             
             
             
  
             
             
             
(ま、それは別にいいんだけど、マジなテーマの作品を、オマージュやパロディで塗りたくったりして作るのは、もういい加減にやめなさいよ) 
             
             
             
  
             
             
             
 と、思ったあたりで、どこかの誰かのくしゃみが聞こえた気がしたものの、そこで信号が青へと切り替わったので、そのくしゃみのことは間もなく意識から捨て去る。 
             
             
             
  
             
             
             
 この日、信号待ちをしていた、都会の孤高な女子高生であり学校帰りの楓子は、ビル壁面のキザ男にアッカンベーしてから、その夕焼けの道を渡る。 
             
             
             
  
             
             
             
完 
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