No.32

このアニメはこう見やがれってんだ!(1)

 一山いくらの激辛アニメレビューもかなり恒例化してきたので、ここらで通しタイトルを付けてシリーズ化することにしました。何かべらんめえなタイトルだけど、どうせあたしじゃなくてニャントロ星人のコーナーなのでまあ良いやね。
 ではでは元気良く第1弾をスタートなのニャ〜!

フルーツバスケット


 「花とゆめ〜♪」の人気連載マンガをアニメ化したものであるが、どうも評価に困る作品だ。
 さすがは大地丙太郎監督作品なので決してつまらなくはないのだが、では面白いかと言われたら全然そんなことない気もする。何というか、
さっぱり物語世界に入り込めないのである。



 本作は群像コメディという体裁を取っているが、コメディの常として、ナンセンスなスラップ劇の部分と、ちと真面目な心理劇の部分を併せ持っている。
 良く出来たコメディの場合、視聴者はキャラクターのパフォーマンスに笑わされながら、その心根の粋やペーソスにホロリとさせられたりするわけで、つまり作家の作業としては、ギャグの部分をなるべく馬鹿馬鹿しく、しかしウエットな部分にはリアルな手触りを持たせて視聴者の共感を呼ばねばなるまい。
 しかるに本作においてはそれと
全く逆の作劇をしてしまっていて、そのことが視聴者の感情移入を大いに妨げているように思うのだがどうか。



 つまり「十二支の動物霊に取り憑かれた旧家の一族」が、そのこと故に様々な事件を巻き起こしたり主人公をビックリさせたりという物語フォーマットは結構だが、実際そのことで深く悩んだりトラウマを背負ったり泣いたり愚痴ったり他人に当たったりしちゃダメでしょってことです。
 彼らが抱える悩みだとか不安だとか孤独というのは、あたしたちにも想像の出来る等身大のものでなくてはならず、だからそれは彼らの特異な境遇とは切り離されていなければ、視聴者としては物語に入り込みようがないじゃない。だって
ネズミだのネコだのの霊に取り憑かれている「運命」をマジに嘆かれたって、感情移入なんか出来ますか。それはギャグの方で扱うべきものであって、しかし本作ではキャラクター各々のユニークなパーソナリティーの方にギャグ部門を担当させていて、だから言ったように、やってること逆なんだよなあ、フルーツバスケット。



 その「運命」が何らかのメタファーだというならこういう作劇でも良いのだが、どうもそんなに高級な文学的構造にはなっていない気もするし。
 そのまんま「旧家の因習」を暗喩・・・はしてないだろうなあ、まさか今さら。では「生まれついての肉体的、精神的障害」だのの暗喩・・・でもないだろうなあ、よもや。そうだったらスゴイけど。
 原作を読んでいないあたしには、この作劇構造の欠陥の責が奈辺にあるのか分からないが、ことアニメに関してのみ言うと、まさにその構造欠陥故に、最初から最後まで「ノレない」、「入り込めない」、印象のヌルイ作品になってしまっているのは残念だ。
 やっぱ映像作品というのは、視聴者を無理矢理鷲づかみにしてその世界に引っ張り込み、心に熱いくさびを打ち込んでくるような迫力ってモノがないとね。楽しいキャラもたくさん出てくるだけに、勿体ないな、フルーツバスケット。



 追記1・そもあたしの場合、最初から主人公が気に入らないので評価が辛くなっちゃってるキライはあるけどね。
なんなの、あの主人公。キレイな男の子に囲まれてチヤホヤチヤホヤされちゃって、んでニコタラニコタラ良い子ぶってさ。キャンディース・ホワイトをさらにイヤなヤツにしたみたいなウザイ女。見ているだけでイライラするぜ!(決してねたみそねみで言っているのではありません)あたしが同じクラスなら速攻ヤキぶっ込んでるのに。


 
 追記2・全編に散りばめられている
「より良く生きるためのことわざ集」みたいなノリも、いかにも少女マンガチックでウザイなあ。いつまでもそんな貧乏くさいことばっかり扱ってるからバカにされるんだぞ、少女マンガ。



 追記3・脇キャラについて書くと、もみじ君はとても可愛いと思います。それと
夾君ステキステキステキステキステキ!もう〜大好きです〜!夾君に「バカヤロウ!」とかってホッペぶってもらったり、「ウゼえんだよ!」とかって思い切りぞんざいに扱ってもらいたいのにゅ〜!それでその後に、「ホント・・・バカだな・・・」とかって優しく頭をなでてもらうの。考えただけで楓子の胸は熱核反応状態なのにゅ〜!(決してあたしは欲求不満ではありません)



 追記4・最終回のクライマックスでミポリンの曲がBGMに流れるのは何なのかな。監督の趣味なんだろうか。画面にはよく合っていて、ついホロリとさせられちゃったけど。あ、ちなみに主題歌はとても良いですね。

天使のしっぽ


 オタッキーハレム妄想作品もここまで来たかという、
極北のタワケコンセプトを誇る話題作!んも〜、ヒドイ作品なのォ〜!(くるみちゃんの声で)



 メイドで飽きたらず、妹で飽きたらず、ついには女の子をペット扱いかい!・・・なんてことは言っても詮無いから言うまい。
 自分の不注意とサボタージュから12匹ものペットを次々死に至らしめたタワケ主人公のところへ、何だってそのペット(の魂)たちがそろって「ご恩返し」に現れなきゃならんのだ!ナメとんのか!・・・なんてことも言っても詮無いから言うまい。
 そのペットたちが皆女の子に変身しているという「鶴の恩返し」調の設定はまあ良いとして、いくらなんでもサルだのヘビだのカエルだの金魚だのが「御主人様」に恋心を抱いてウルウルお目々で迫ってくるというのは気持ち悪いだろ!大体ろくに舌も回らん幼女からいい年のオネエチャンまでって、守備範囲広すぎだぞ!「愛は年齢も生物種も越えて」って、変態か、御主人様!・・・なんてことも言うまいよ、詮無いからね。



 かようそのコンセプトについては揶揄することすら空しくなるような本作であるが、実際見てみるとあざとさはさほど感じられず、単に不器用で退屈で見ている時間がもったいないなあという手触りの凡作である。「たると」の後番組だけに印象も似ている感じですね。
 しかしどうせこういう非道いコンセプトで作品を作るのなら、
もういっそメチャあざとい作りにしちやった方がスッキリするのに、なんて考えてしまうのは、昨今のアニメ事情に毒されて、あたしのオツムも壊れかけているからでしょうか?



 だってねえ、せっかく「女の子」が「ペット」扱いしてくれとゾロゾロやってくるのだから、パンチラさせまくったりお乳をポロポロこぼしたり主人公とエッチに絡んだりだのと、メイちゃんをさらに下品に突き詰めたようなオハナシにしちゃうってのが本道というものじゃないだろうか。視聴者たる頭カラッポのオタッキーたちも、そういう即物的なジャンクフィルムが見たいんでしょ?
 それを何やらハートウォーミングもどきの展開をチマチマ続けられても、
「今さらカマトト(死語)ぶってんじゃねーよ!」という気分にさせられてしまうのだ。利権ズッポリの汚職代議士が、「私は庶民の暮らしのために精勤している」と言い募るようなもんである。



 あざといコマーシャリズムには徹せられず、しかしデンと構えて本格的なドラマを作る覚悟もない、こういう中途半端な制作スタッフには、GONZOの厚顔と無恥を見習えよと言いたいです。同じゴミを作るなら、目と鼻の曲がるようなゲロ汚物を作っちゃった方がいっそ勝ちだと思うぞ。勝っても空しいけど。



 追記・どうでもいいけど、あの最終回はどう見ても蛇足でしょう。その前の回の方がよっぽど最終回らしいラストだぞ。さらにどうでもいいけど、御主人様、変なもみあげらお〜。(ルルちゃん)


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