No.56

このアニメはこう見やがれってんだ!(17)



フルメタルパニック?ふもっふ


 アニメ「フルメタル・パニック!」はラブコメとしてはそこそこ見れるけれどもミリタリアクションのパートがカスだし余計だと以前に評しておいた。そう考える人が業界にも多かったからなのかは知らないが、本作「フルメタルパニック?ふもっふ」は前作からラブコメパートだけを独立させたような造りになっている。
 んがしかし、それで首尾良く傑作になったかと言えばそれほど単純でもなく、確かに前作よりはマシな内容になっていると思うんですが、「コイツぁ面白い!」と快哉を叫びたくなるほどでもない。駄作じゃないけど如何せん凡庸って感じかな。



 どうしてそうなってしまったかと言えば、単純に
シリーズ構成がスカタンだからだと思うのね。要するに「フルメタルパニック?ふもっふ」というシリーズで何をやるのか、言うのか、というキッチリしたビジョンが無いままに構成を組んでいるように思える。そんなこっちゃアカンぜよ桂さん!


 
 とにかくラブコメをやりたいのであれば、かなめと宗介が何となくイチャついてる日常をダラダラ映したってダメでしょう。当人同士はそれで楽しいかしらないが(別にやっかんでいません)、エンタテイメントとして人に見せるのであればヒネったりひっくり返したり焼いたり焦がしたりと
恋をイジらなきゃ作劇じゃないよ。
 端的に言うと、(ラブコメだとすれば)テッサちゃんをゲストキャラ扱いでノンビリ使ってるようでは作家失格でしょ?
 彼女が本命の恋敵なのであればシリーズを通じてそう扱うべきだし、そうでないなら別にそういう役を設定しなさいな。宗介やかなめの心情がブレたり凹んだり負けるもんかと牙を剥いたりしなきゃ、視聴者だってラブコメとして楽しめるわけがないではないか。



 またラブコメではなくスラップスティックがやりたかったのだとしても、これではいかにも弱すぎる。
 一連の宗介の行動も笑えるほどハチャメチャ(絶滅語)というわけではないし、細かなギャグもいちいち垢抜けない。何つーか、優等生の書いた「わらいばなし」を読まされてるようなショボイ印象。もうちと頑張ろうや、なあ。



 原作ファンへのサービスフィルムと割り切れば本作だって十分及第なんだが、フルメタというコンテンツはもっと面白く作れるはずだと思うのであえて苦言を呈させていただいた(作画が良好なだけに尚更勿体ない感がある)。
 「どうせまた続きを作るんだろうから・・・」みたいなゆるゆるのテンションは厳に慎み、クリエイターたるもの常に一期一会の精神で仕事に向き合っていただきたい。



 追記1・ボン太くんのアイデアは楽しいし可愛いと思います。これを軸に大胆に構成を組み直し、毎回宗介がボン太くんに変身するまでの(あるいは変身する際の)ドタバタ、そして変身後のカタルシスあふれるアクションというメリハリあるフォーマットを作れれば面白くなったんじゃないかなあ。変身シーンもド派手にすればそれ自体がギャグになったと思うのだが。
 ちなみにボン太くんのCVが金田朋子というのは豪華だけど、何やら次第に人語を話す役が減ってきてないか、朋ちゃん。



 追記2・前にも書いた気がしますが、テッサちゃんはスゴクあたしに似ていると思います。
何故ならとても可愛いからです。思わずかなめよりも身贔屓したくなっちゃいますよ。
 また本作では、前作で単なる背景キャラだった恭子ちゃんにそれなりの味わいが出てきたのは良かったと思います。



瓶詰妖精


 軽いおつまみアニメのニコイチオンエア企画「動画大陸」にかかった作品で、前作に当たる「まおちゃん」のスタッフがまんまシフトしてきて作ってる感じ。黒田・岩崎・柳沢トリオですな。
 「まおちゃん」は壮絶な空疎さを誇る超退屈アニメだったわけだが、スタッフが同じだけあってこの「瓶詰妖精」も雰囲気がクリソツ。要するに
「瓶詰妖精」が毎週無事オンエアされようが編成の都合でジャパネットたかたに変更されてようが世の中の誰も気にしないだろう感じ。
 でも小麦ちゃんこと桃井はるこ嬢出演に免じて見続けるうち、何やら不思議な味わいが出てきて、全話視聴後にはそこそこ楽しい気分にさせられちゃったのが意外ナリ。こういうところも何気にまおちゃんライクだな。花を育てる話とかバレンタインの話、それに最終回なんか結構良かったですよ。
 まあ全話見たって2時間デコボコで終わっちゃうわけだから暇つぶし程度に見るには良いんじゃないでしょうか。でもそれだけの尺を4巻もに分けて売ってるDVDは超あこぎだと思うけど。



 追記・原作マンガと比べてどうなのか知りませんが、このアニメ版のキャラはみんなとっても可愛いです。妖精たち4人の差別化が上手くされていないのは残念ですが、見てるだけで何となく和むのは価値だと思います。モモーイ氏演ずるたまちゃんもキュートだゾイ。


BPS バトルプログラマーシラセ


 
日本のアニメ番組史上最凶の萌え放射能ダダ漏れ健気ウェーブ爆裂「お願い守ってください」フェロモンフルパワー美少女「天野美紗緒」のイメージが、一部下卑たアニヲタ(=美紗緒ファン全員)のオツムの中でいかに発酵、醸成されているかの1パターンを的確に言い当て、ほれっ、うぬらの見たい美紗緒ちゃんてのはさだめしこんなんじゃろうが!とでも言わんばかり、他でもないオフィシャル側がそのイメージをわざわざ絵にしてくださったという、所謂「プロが同人ネタをやっちゃったヨ〜ン」型エンタテイメントの中でも群を抜く露骨さでデモる怪作。
 何しろ色んなえちぃコスを着た美紗緒ちゃんが色んなえちぃシチュを演じてくれて、あげく主人公である不潔なブサオ(視聴者たるキモヲタの象徴)に「お兄ちゃん!」とムリュムリュスキンシップまでしてくれるのだから悶絶必至!ヲタ共の腐った嬉し涙が目に見えるようだぜ。



 素晴らしい良作を産む一方、こうした恥知らずなこともやってのけてアッケラカンとしているのがAICの不思議なところであるが、それにしたって例えばガイナックスが自社でエヴァのポルノ商品を売りさばいたりしているようなむき出しの拝金主義とは違い、
何となくそういうのが作りたくなったから作っただけという、一種真から同人的な無邪気さが感じられて憎めないのもこの会社らしい。
 まあ元ネタであるプリサミ自体がそもそも同人的企画だったわけだから、今さら節操がないと本作に噛み付くのも何かズレていよう。



 「BPS」自体の内容について言えば、ドラマ、主人公キャラ共にひとっつも面白くないけれど、眼目たる美紗緒ちゃんはなかなか可愛く描けているから、同人エンタテイメントとしてはまずまずオッケーだろう。笠原氏CV版以外は見たくないという原理主義ファンを別とすれば、美紗緒ちゃんが映っている環境アニメとして気軽に楽しめるのではないだろうか。
 惜しむらくは第一部5話分でもって企画が中断されていることで、お下劣ラブコメとしての体裁が一通り整ったところだっただけに残念だ。出来れば完結を〜、
まうまう!!



 追記・EDは心の浮き立つ楽しい曲で気に入りました。作画がまた絶妙に合っていて、ネコと一緒に踊るシーンとかすっごくラブリー!ラストカットがOVAのプリサミを彷彿とさせるのも嬉しいファンサービスだと思います。


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