No.62

このアニメはこう見やがれってんだ!(22)

 
 

美鳥の日々

 
 井上和郎という人のマンガが原作だそうで、「右手が恋人」という尾籠なレトリックをまんま絵にするというアイデアは面白いと思うんだけど、キャラの扱いやドラマの転がし方がぞんざいすぎて途中からすっかり退屈しちゃった。
 ヒロインの美鳥ちゃんはでっかい時とちっちゃい時で性格違いまくってるし、彼女の置かれたトンデモな状況もドラマの緊迫感に寄与していない。どうせ本体が目ェ覚ましてハッピーエンドだろうよと容易に想像されるため、オハナシの終着に興味が保てないのである。
 原作がそうなっているのなら文句を言っても仕方ないのだが、いっそ美鳥ちゃんの本体を殺しちゃうなり何なりして、前提となるシチュに不可逆性を持たせた方が作品としてスッキリしたんじゃないだろうか。2人で生きていくしかないというくびきをまずはめ、そこから必然的に絆の育っていく(育てなくてはならない)過程を描くわけだ。
 それでは作品全体が暗くなっちゃうんじゃないかという向きもあろうが、そこはキャラのパフォーマンスで朗らかなノリに仕立ててみせるのがコメディ作家の腕前であろう。ダイジョブどうせ美鳥ちゃんて
ピョン吉みたいなもんじゃんか。



 追記・この作品、ずっと何かに似てるなと思ってたんだけど、キャラの雰囲気とか配置が「ななか6/17」にクリソツなんだと全編視聴後にようやく気が付いた。もっとも「ななか」のが全然面白いっすけど。あと似てると言えば「南くんの恋人」もテイストとして入ってるかもね。



 追記2・作画は高め安定で素晴らしいです。何よりキャラが可愛く描けているのは価値だと思います。あとOPもスゴク良いですが、何か最近アニメソングってとランティスばっかになってきた気がするにょ。



 追記3・
どうでも良いけど何だよ中原麻衣売れてるじゃねーか。まあ確かにちょっと可愛いかしらないが、あたしがもし声優の道に進んでたらアンタなんか鼻息で殺せるんだぜ。そのことを忘れんじゃねーぜ。
 
 

妄想代理人

 
 「PERFECT BLUE」や「千年女優」で名を馳せた今敏氏プロデュース作品で、あたし的にこの人のアニメはどうも好きになれないんですが、と言うのもチープなテーマを何やら文学でございってなノリで上から語ろうとする、例えて言えばどう見ても安いクズ肉の料理を松坂牛ステーキじゃゴルァ!と顔と声で怖がらせて売りつけるような作風がカンに障るからだ(クズ肉を売ることは少しも悪くない。美味しく調理したクズ肉ですよと言って売ればイイのである)。
 まあ普段活字なんぞ消費しないヲタの白痴坊やであれば、そんなモノにでもコロリダマされちゃったり畏れ入っちゃったり「深い!」とかヨタ言っちゃったりするのかしらないが。



 氏がこの「妄想代理人」でやっていることは、所謂ルーマーだとか都市伝説だとかが、伝播していく過程において様々にディティールを付与され、あたかも真に血肉を持った生物であるかのように振る舞い始めるという現象の戯画化である。
 それ自体がネタとして新味を欠くことは前記の通り一向構わないが、毎度の大仰な語り口にはやはりちょっとウンザリで、ましてそのテーマをまんまベラベラ説明し始める後半部分は安さ炸裂なんだけど、でもまあ自分が好きに語ることだけでヨシと悦に入っていたこれまでの作品に比べ、なるべく視聴者に楽しんでもらおうとする演出上の余裕みたいなものが出てきた点は評価するべきだろう。
 少なくとも見ていて退屈ではないし(少年バットが「逮捕」されてしまう中盤の展開なんかサスペンスフルで面白い!)、今日日もう退屈しないってだけでアニメ作品としては貴重かもしれず、ここは海に負〜けな〜い広〜いこ〜ころ♪(by朋ちゃん)で赦しちゃうのが大人のアニメファンってもんだろうぜ。



 ちなみにOPアニメを今氏が自画自賛していたけれど(自らがコンテを切ったらしい)、なるほどこれだけはそのカッコ良さを認めるにやぶさかでない。OP見るためだけにDVD欲しくなっちゃったもんなあ。
 テーマ曲とのシンクロぶりもパーフェクトと言って良く、サビに合わせてキャラ全員が居並ぶシーンなんか何回見てもシビレちゃいますよ。



 追記・月子ちゃんて誰かに似ている。清楚で可愛くて儚げで、いつも独りぼっちで、苛酷な現実によって吹き千切られそうになる細い糸のような自我をひっそりと抱きしめている・・・
って何だ、あたしにソックリなんじゃないか今気が付いたぜ。
 ちなみにマロミは最初何となく小桜エッちゃんかなと思って聞いていたんだけど、実はモモーイだったりしてギャフンなあたし。そろそろ補聴器がいるかのう、フガフガ。
 
 

ヤミと帽子と本の旅人

 
 第一話をボンヤリ見ていて取りあえず綺麗な絵だなあと感心したのだが、それにしてもこりゃちょっとエロすぎません?って公式サイトに行ってみましたら、またぞろエチぃ系のPCゲームが原作なんだそうで、イエそのこと自体は構わないけれど、ポルノなら最初からいかにもポルノでござい!ってなタイトルで分かりやすく自身を名乗っておくがイイじゃないか。「旅人ヤミ情事・脱がされた帽子!」とか何とか。それはそれでイヤか。



 アニメの内容について書くと、(原作ゲームとの相関がどうなってるのか全く知らないけど)登場キャラ皆が色んな異世界をウロチョロしながらアンアンイヤ〜ンダメヤメテとお耽美な旅を続けるだけのモノ。
 それで面白いのかと言われたら、まあぶっちゃけ退屈の極みと言っても良いと思うんだけど、上で書いたようにとにかく作画は良いし、テレビアニメという制約内ギリギリのところまでエチぃ味も入れてあるから(よくこれ放送事故にならなかったな〜てきわどいシーンもあったりしてアラやだ顔が赤いわ)、原作ファンに対するサービスフィルムとしてはそれなりに期待に応えたと言えるのかもしれない。
 一方あたしのような一見(いちげん)客に対する配慮も全く欠いているわけではなく、ちょっと見てんでデタラメに思えるストーリーだとかシリーズ構成も、通して視聴すれば作家の壮図というのがキチンと見えてくるように作ってあるのはまあまあ良心的なんでないかい。
 本作の登場人物達は、それぞれに人生のいずこかで出会った「イブ」なる美少女をかけがえのない思慕の対象と断じ、時や宇宙を越えてまで彼女の影を追い求め続ける。しかし追いかけていた相手の正体は、他でもない彼ら自身が、
他人と交わらずに自らの精粋だけを無垢のまま抱きしめていたいという小児的な自己愛の象徴であって、その迷宮に囚われてしまう人の悲哀(クッ、書いててツライぜ)を、そうした例え話の形で描ききっているところがなかなかイキなお仕事なのであった。
 語るべきことを不足なく語ってスパッと終わる最終回も好印象。清水ロリロリ愛が哀切を込めて呼びかけるラストカットも、人は誰でもイブに出会っているのだという本作のテーマを上手く伝えていたと思います。



 追記・何かやっぱ「ボク」とか言っちゃうマニッシュな女の子はカッコイイですわ〜。だ、だからって第一話のキスシーンでドキドキしちゃったりしてないぞ!それとあたしも葉月ちゃんに守ってもらいたいっ!ギュッてしてもらいたいのッ!とかって胸が苦しくなったりしてないぞッ!
絶対違うからなッ!



 追記2・CVはなかなかに豪華でヲタなアピール度はあったと思います。それと喜久子姉さまがまたまた色っぽい役で出ていて、
あ〜もうスキスキスキスキお姉様〜ッ!!って何だか今回は書いてて腐女子みたいだ〜ッ!


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