No.75

このアニメはこう見やがれってんだ!(33)

 
 

おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザーズ

 
 虫プロの「ワンサくん」以来の本格ミュージカルアニメ・・・だかどうだか良く知らないが、歌うアニメや特撮に長くこだわり続けてきた浦沢、ナベシンコンビにとっては念願の企画実現だったに違いない。
 主役CVとして松崎しげる氏を20数年ぶりに引っ張り出したりという話題作りも、両氏が本企画にかける意気込みを現しているようで嬉しくなる。クリエーターが、真に作りたいモノに全力で打ち込む姿はいつだって尊く美しいとあたしは思うノダ。



 しかるにそのことと作品の出来不出来ってのはまた別の話であり、本作を見てみてまず抱く印象が、
「歌わなきゃイイのに」というトホホなモノになっちゃってるのは皮肉なり。
 とにかく何でもイイから歌わなけりゃと肩に力が入りすぎてる感じで、いやミュージカルなんだから歌うこと自体は当然としても、テキトーな歌をのべつに歌っていればそれでOKって安直なモノでもないだろう。むしろミュージカルなればこそ、使う歌とその挿入のタイミングを十二分に吟味しなければ、歌うアニメをあえて見たいと思わせる訴求力を損ねてしまうのではないだろうか。



 実際本作てば、覚えて歌いたくなるような佳曲が用いられてるワケでなし、どころか、ただでさえ大して面白くもないドラマやギャグが、ヘボイ曲でいちいちテンポを削がれて痛々しい印象を増している。これじゃあね。
 ひっきょう、愛故につんのめってコケちゃった作品ということでしょうか。「好きだ」、「作りたい」だけで上手く成立しちゃうワケじゃないから創作ってのは甘くないですわね。



 追記・オンエア当時、よく放送事故にならなかったなという際どいネタの連発が話題を呼んだが、それで面白いかというと全然そんなことないのも本作の難点だ。
 
韓流とかコイズミ首相とかナベツネゴーマニズムとか、扱う素材は新しいのに、料理法はいかにも古臭い、大昔の風刺マンガみたいなノリ。垢抜けないことおびただしくてウンザリしちゃうのん。



 追記2・マコちゃんはとってもカワイイしコケティッシュですね。さすがは近藤高光氏デザインです。劇中でそれが上手く活かされなかったのは残念ですが。
 
 

流星戦隊ムスメット

 
 TVアニメってマジで日々移ろってく文化だなあと痛感させられるのは、この「ムスメット」のような作品を見たときだ。つくづく滞るということを知らない。
 あたしがある作品をして、「ヒドイ駄作だ。これ以上つまらない作品なぞ作れるものか」等と毎度口の悪い評を書く。その時は本当にそう信じて書いているのだが、半年もすれば、それに倍する凶悪ゴミ作品がバキバキ出現して、我が身の純情さ、想像力の貧弱さを思い知らされる。



 「ムスメット」は、そうやってあたしの目を開かせてくれる駄アニメの中でもトンデモ弩級の汚物であり、例えば
そこらの路上で誰でも良いから素人を数匹拉致ってきてテキトーにアニメを一本作らせたとしても、つまらなさで本作を超えることは至難であろうと思われる。そのくらいのダメっぷり。



 文芸的には、いかにも六月十三らしい、統合失調症患者の脳内もかくやという脈絡もクソもないシリーズ構成で、またそれで意外性による面白さが出ているわけでもなく、単にデタラメなだけ。
 ビジュアルもモッサリと垢抜けない印象であり、ドラマ(無いけど)を無視してキャラの可愛らしさだけを愛でるという鑑賞法もまず不能であろう。
 見所と言って唯一思いつくのは、まあモモーイ出演くらいでありんすか(早乙女コウ風に)。あんまり活躍しないけど。



 追記・ちなみに山本麻里亜も出ているけど、こちらは意外にまともな演技をしていて逆にガカーリ。ドヘタクソでこそ華がある演者の総天然色見本ですわねえ。

GUNSLINGER GIRL

― IL TEATRINO ―

 前作に当たる「GUNSLINGER GIRL」は原作者である相田氏のお気に召さなかったそうで、だからなのか何なのか、この「IL TEATRINO」では相田氏が全話分のシナリオを書き下ろしている。
 そのこだわりやまことに良し!とまずは讃えたいが、しかるに結果出来上がった作品は何とも凡庸かつチープな印象で、巷間、やっぱ餅は餅屋なんじゃねーのという評判しか取れなかった感があるのは残念だ。



 物語はトリエラを中心としてそれなりに上手くまとめられているのだが(彼女なりの担当官への愛情表現として、最強の飼い犬たらんとするトリエラと、同じく自分を救ってくれたテロリストに忠誠を尽くす殺し屋ピノッキオが、互いの内に同質のアイデンティティを見出しながらも激突し合う運命の悲哀を描いている)、如何せん尺全体としてのダイナミズムを欠き、ワクワクするな、続きを見たいなという気分にさせてもらえないのは難だろう。



 加えて、アニメスタジオの変更に伴い、ビジュアル面でやたらレベルダウンしていることがダメ押し的にイタイ。
 ただでさえ陰惨極まりないオハナシを、こんなチャラい絵で見せられては、さらに無用の反発を招いてしまうのではないだろうか(もっとも、こちらの方が原作の味に近いという向きもあるようだが)。
 マッドハウスのお仕事と比べるのは気の毒だけれど、前作のしっとりと情趣に富む作画と美術が恋しいですよ。



 追記・原作者が特殊部隊のことを良く知らないのか、突入作戦にリアリティも緊張感も全くないのは前作通り。
ほとんど新春隠し芸大会レベル。サバゲのが全然マジの殺し合いっぽいんだから頭イタイじぇ。



 追記2・トリエラの過去話(ていうかヒルシャーの過去話)は哀切があってなかなか良かったです。ただシリーズ構成全体の中で、そのエピソードがイマイチ上手く活かされなかったのは残念ですが・・・


→電波館のトップへ戻る