No.39

このアニメはこう見やがれってんだ!(4)

 世は第何次だかのアニメブームなんだそうである。なるほどどう見ても異常としか思えない作品数が毎週放映されているし、故に粗製濫造状態と嘆く向きも多いようだ。
 しかしあたしは、意外と思われるかもしれないが、そうした現状を一概に悪いとも思わないのである。だって次から次と傑作名作が生まれてくるわけなんてそもそもないじゃん。
 「プリサミ」だの「十兵衛ちゃん」だの「フィギュア17」だの佳編は、2、3年にひとつ生まれてくれば良い。その間はジャンク作品に市場が埋め尽くされても、あたしは幸せだ。
 文芸作品なんてのはさ、百億のゴミに一粒の宝石が支えられてるようなものよ。オッケーオッケー。とは言えしょうむないモノをやっつける手は弛めないけどね。

天地無用!GXP

 あたしはTV版「魔法少女プリティサミー」の大・大・大・大・大ファンである。これ以上に愛すべきアニメシリーズがあるであろうか。あるわけないよな。あるなら見せてみやがれ!ってくらいに好きなのだ。
 しかるにその本家たる「天地無用!」シリーズのしょうむなさってばどうだろう。OVA、テレビ版、劇場版と数だけはやたらと作られているが、どれもかったるくて野暮ったくて見られたモノではない。などとあしざまに書く責任上、その全てを視聴したあたしの身にもなって欲しいもんだニャ。



 「天地無用!」が面白くない最大の理由としては、それが
「世界」だの「ストーリー」だのという大それたものを作ったり語ったりしようとしているのが、そも根本的な間違いだからじゃないかと思う。
 ユニークなキャラクターを最初から多数配置してオリジナルなコメディを作ろうという壮図は良いのだから、全編視点をキャラから離さずに作劇をすれば良かった。樹雷だ何だという氾銀河規模のバックグラウンドは、「そういう世界があるんですよ」と、ごくサラリ触れれば事足りたはずである。大体誰がコメディの背景世界なんぞ知りたいものか。
 「サクラ大戦」のアニメ版なども全く同じパターンの過ちを犯しているが、こういう根本的な勘違い作品はホントに見ていて辛うございますわ。



 さて「天地無用!GXP」は、その「天地無用!」の最新TVシリーズである。
 そんなにキライなシリーズならハナから見なきゃいいじゃないかという御意見もあろうが、キャラ設定が奥田淳氏と聞いては見ないわけにもいくまいて。あたしが現代日本で一番好きな絵描きさんの1人だもんね。
 また監督がナベシンことワタナベシンイチ氏というのにも興味が湧いた。
 「晴れブタ」終了からこっち、ろくなモノをプロデュースしていない氏であるが、そろそろまた痛快作を放ってくれても良い頃じゃないかなと思ったのだ。



 だけど番組が始まってすぐにガッカリ。
やっぱ「天地」は「天地」だぁねェ。
 オハナシは例によってスケールだけやけにバカでかく、銀河警察や樹雷宇宙軍や宇宙海賊がオバカな戦争に興じる様をダラダラとなぞってゆく。銀英伝じゃあるまいし、いくら何でも視点高すぎだっちゅーの。(もちろん銀英伝に比べたら千倍面白いけど)
 キャラも数だけはやたらゾロゾロ出てくるが、そのどれもろくに描き込まれないままに、どうでもいいセリフを棒読みするだけ。人も世界もひたすら拡散して希薄になっていくような感覚にとらわれる。
 西南クン(今回の主人公)からカメラが外れちゃ面白くなるワケがないじゃん!もっと彼の心に入り込ませてよ!恋のさや当てコンボでドキドキハラハラニヤニヤさせて!コメディなんでしょ!ラブコメなんでしょうが!違うのか?(怒って言うなよ)



 やっぱあれだね、シリーズ構成の黒田氏は「プリサミ」で全才能を使い果たしちゃったんだね。本作の文芸作業は、だから
「抜け殻」という言葉を強く想起させる。
 世界があってキャラがあってオハナシがある。しかしキャラたちの心情には、何一つ視聴者の胸に迫るモノがない。がらんどうなのだ。
 完全な番外編扱いなのに天地ファミリーがそろって出てきたり、「デュアル!」のメカキャラがクライマックスで登場したりという展開もイヤだ。そういうのはファンサービスなどではない。単なるケジメのない手抜き仕事だ。



 ナベシン監督も、自らキャラのCVを努めたりなど非常に意欲的に取り組んでいることは認めるが、そんなことより先に力を入れなきゃいけない作業があるんじゃないですかねえ。作品世界に魂を吹き込むっていう、プロデューサーにとって一番大事なお仕事が。
 柱を立てて屋根と壁を作れば、後は中で遊んでれば良いっていう、創作ってそんなお気楽なモンじゃないと思うんだけど。


 
 というワケで、本作の収穫と言えば、水谷優子氏と小桜エツ子氏が元気に声の出演をしていてホッとしたことくらいしか思いつかないぞ。ああ〜、せっかくの奥田キャラが勿体ないっちゃ!
 ちなみに
宇宙戦艦魎皇鬼だけはいつ見てもカッコイイっすねェ(デザインよりもアイデアがね)。

フルメタル・パニック!

 WOWOWノンスクランブルで2001年10月より放映予定だったのだが、その直前に起こった同時多発テロ事件によって約半年間塩漬けにされてしまったという、色んな意味で話題作。
 WOWOWの、「放送が与える社会的影響を鑑み、今回の大惨事(テロ)を想起させる番組の見送りという緊急の措置を取らせていただくことにいたしました」という公式発表が何気に背負っててマヌケです。
「フルメタル・パニック!」に社会的影響力なんてあるわけないでしょうがよ。



 さて本作は例のGONZOプロデュースの作品であるが、原作として人気小説が存在するそうで、その小説が上手く出来ているからなのかどうかは知らないが、GONZO作品としては抜群に面白いと思う。(もういっぺん見ろと言われたら走って逃げるけど)
 ストーリーは、国際的な対テロ特殊部隊(?)のメンバーである主人公が、何故か要人扱いとなっている女子高生を護衛することになり、任務上通うこととなった高校を舞台にオバカな騒動を引き起こすというベタなものだ。
 この世界ではロボット兵器が各国軍によって運用されており、主人公もそれを操ってテロリストに立ち向かう。だからこのエンタテイメントは、ロボットアクションとミリタリーバイオレンスと学園ラブコメを合体させたという気の○った企画なのだが、それぞれの要素が無理なく馴染むように(あくまでマンガレベルでだが)演出されており、「ミスマッチ感覚で魅せる」なんてあざとい戦略だけがまずあったのではないらしいことには好感が持てた。(・・・別に褒めるようなことでもないんだけどね。今日日あんまり小汚い売らんかな作品ばっかりだからさあ・・・)



 詰め込まれた要素の中では、やはりメイン(あたしはそう思う)となるラブコメパートがイチバン出来が良い。
 何の新味もないベタな展開が臆面もなく続くだけだが、好きな相手に意地悪してみたり、ワザと無視しちゃったり、嫉妬にかられて我を忘れたり、でも一緒にいるとそれだけで満たされた気持ちになるという若い男女のウフフ劇は、それが何億回見た記号の世界であっても、やっぱり楽しい気持ちになりますよ。
 一方ロボットアクションとミリタリーの要素は、まあよほど薄い人でなきゃ楽しめないだろうなあ。
 主人公は「腕利き」というふれこみのわりにスカタンばっかだし、戦場の緊迫感とか全然無いし、ロボットのデザインはゲロダサくてそのパフォーマンスは超ヘボヘボ。見てると寝ちゃうぞ。
あたしは寝たぞ。
 まあ制作側としては、アクション部分はあくまで主人公の異常(だよな)なキャラを立てるためのバックグラウンドとしてしか描く気がないのかなあ。原作ではその比重がどうなってるのか知りませんが。



 ところであたしは、ヒロインよりも脇キャラのテッサちゃんの方が全然可愛いと思いました。これは最初から狙ってそう作ってるのかな?
 真面目で健気で情熱家で、でも異性には奥手で、高校時代のあたしを思い出しちゃったぜ。


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