No.44

このアニメはこう見やがれってんだ!(8)

 このあたしにも年相応にそこそこの数の友人というのがおりまして、彼らが友達甲斐に諫言というのをしてくれることがある。あたしの性格や行動のこの辺が良くないとか、直した方が良いんじゃないかなどと言ってくれるわけだ。
 曰く、「言ってることとやってることが全然違う」だとか、「自分よりプレステージの高い相手にはすぐに媚びへつらう」だとか、「権利の主張と単なるワガママをはき違えている」だとか、「ビリー・ミリガン級の多重人格」だとか、「いつも皆からチヤホヤされていないと気が済まない」だとか、「太くて恥ずかしいとか言いながらやたらと他人に脚を見せたがる」だとか、「都合が悪くなるとすぐ泣いて誤魔化す」だとか、「その場を言い逃れるためならどんなウソでも平気でつく」だとか、「『こち亀』に出てくる早乙女リカみたいな喋り方」だとか、誰に何を言われたのかは絶対に忘れないが、内容的にはまあ色々だ。
 言いにくいことをズバッと言ってくれるのが、むしろ真の友人である。つまり彼らはあたしのことを心配して言ってくれているのだろうが、
ハッキリ言って大きなお世話なんだよ!



 今回扱うアニメ作品に関しても、「これこれの作品をサイトで叩いてやるもんね」と飲み会でブッたところ、「世間的にはなかなか評判の良い作品のようだから自重してはどうか」などと腑抜けた諫め方をするヤツがいたので張り倒してやりました。
 あたしはこの最低の世界に少しでも知性の光を当ててやるべく、崇高な理念に燃えてレビューをしているのだ。
 あたしのようなインテリが、知的底辺民どもを無慈悲に見捨ててしまってはどうなるか。あたしはどうなっても彼らのたわけた蒙を啓いてやらなければ!無知無能無教養の血の池から救ってやらねば!しかるに(・・・・ラスカルの中にいる、絵描きでメガネっ娘の方の楓子です。テキスト担当のエンペラー楓子ちゃんのリミッターが外れて延々前フリを続けていますが、気にせずどうぞ本文をお読み下さい↓)


人造人間キカイダーThe Animation


 ずいぶん以前にCS放送向けに作られた作品だが、先般WOWOWでまとめて放映してくれたのでやっと見ることが出来ました。



 見てまず抱いた印象は、とにかく発狂しそうなほど脚本ダメダメってこと。ドラマもキャラも病院の老人食をエビアンで2500倍に割ったくらいに超薄味だ。こんなヤッツケ仕事はイヤンイヤ〜ン。
 嵐のような御都合主義の無限コンボも困りもので、その最たるものはサソリホワイトのエピソードだろう。
 行方不明の母を捜すため、その故郷だという港町に向かうミツコとマサルそしてジロー。と、街に足を踏み入れた途端に一人の女性と出ッくわす。
 「あ、お母さん!!」
 
勘弁してよ。
 いやこの時も「母」である女性はギルの命令で動いていたのだから、ミツコたちの前に都合良く現れるのは当然かもしれない。しかしいくら何でももうちと見せ方に工夫ってものをしてよ。これじゃ視聴者虐待だよ。あたしはああしょうむない作品だなって心のシートベルトをしていたから死ななかったけどそうじゃない人はマジで死ぬよ。春日部辺りのお化け屋敷みたいなボロアパートの一室に孤独死してパリパリに白骨化してる元はデブだったヲタがいるかもしれないけどそれはサソリホワイトを見たからだ。スタッフの人殺し!楓子警察に言っちゃうぜ。



 まあ考えてみると、そも「キカイダー」は原作マンガからして陳腐だ。一貫した力強いストーリーやドラマがあるでなし、アクションだっててんでおざなり。所詮はTV番組とのタイアップ企画だという割り切りからか、石森先生も作画にはほとんどタッチしてないしね。
 しかしでは「キカイダー」が今日エンタテイメントとして再生できないかと言えばそうではないと思うのだ。
 そりゃあでっかい歯車だのコイルだのを詰め込んで
ビビビビビなんつってるロボットにフランケンシュタインの悲哀を表現させようったって、今日日そんなものが毫もリアリティを持てるわけはない。しかしそのロボットがリアリティなんぞ知ったことかとばかりに暴れまくれば、視聴者は少なくともそのアクションのカタルシスを楽しむことは出来る。
 恐らくは制作側がターゲットとしたのであろうあたしたち70年代特撮世代は石森アクションの格好良さを知っているし、特撮版キカイダーがそこそこに痛快なエンタテイメントだったことも知っている。だからアニメ「キカイダー」もそのアクション部分をこそ眼目とし、それを現代らしいシャープな演出で5000倍くらい格好良く再生、表現するべきであった。



 しかるに本作のスタッフは、ストーリーだのドラマだので「キカイダー」を見せようなどと大勘違いをしている。そのストーリーが原作を斬新な解釈でもって再構築していたりすればまあそれでも良かろうが、冒頭書いたとおり陳腐の極みだしね。アッタマわりーの。
 あげくあのスーパーカッコイイキャラであるグレイサイボーグやグリーンマンティス(このネーミングの素晴らしさ!)がダサダサに演出されているのだから腹が立つ。
 グレイサイボーグはボカスカ建物を蹴倒して樹を引っこ抜いて岩も粉砕して突進してこなきゃダメでしょ。グリーンマンティスはキリキリキリって擬音と壁に映る影だけでタメにタメ、一旦正体を現すや南斗水鳥拳よろしく何でも細切れにして電撃で辺り中火事にして暴れ回らなきゃダメでしょ。ほんでその怪物ロボットをキカイダーがタコ殴りにして折って畳んで裏返してデン・ジ・エンドでバラバラにしちゃってダーク破壊部隊、二人目!ジャジャ〜ン!ザマ見ろ、まだ来るなら来いッ!てカッコつけなきゃダメでしょうが。
分かれよそれくらい。分かんないなら「十兵衛ちゃん」の殺陣の垢でも煎じて飲んで勉強せい能なしめが!


 
 結局本作のアクションでちょっとでもカッチョイイところと言えば、サブローがジローのパンチを目を見開いたまま顔面で受けるシーンだけ。その他見所として思いつくのは服部探偵の助手の猿飛エッちゃんを小桜のエッちゃんが演じていて相変わらず可愛いことと、ミツコを演じる堀江由衣がいつ
「お兄ちゃん、大好き!」と言い始めるかハラハラすることくらいだ。いずれにしてもキッズステーションでお金払ってまで見るモンじゃないわい!などとWOWOWで見たあたしが怒るのは筋違いとの御指摘もおありでしょうが、この程度のゴミ作品に騙されている巷の愚民共を憐れみ、わざわざ義憤から発言してあげてるんだからむしろ泣いて伏し拝んで欲しいです。



 追記・ミツコがジローの修理をするシーンをベッドシーンに模したりしていて、スタッフとしてはせいぜい洒落た演出をしてみせたつもりなのかもしれないが、単に頭悪そうでキモイだけだからやめれ。あれじゃミツコは欲求不満の変態だろ。いやまあその通りなんだけどさ。


円盤皇女ワるきゅーレ


 何となく話題作らしいってんで録画しておき、放映終了から一年近く経ってようやく見てみたんだけど、そのあまりのくだらなさとつまらなさにブッたまげ、このあたしに思わずオフィシャルサイトを検索させてしまったというツワモノ作品。
すげェよワるきゅー。



 サイトで調べて分かったんだけど、オリジナルじゃなくて原作マンガ付きだったのね。んで原作者の介錯という人は、他に「くるみ」とか「たると」なんかを描いているヒットメーカーらしい。しかし本作に比べると、あの脱力感満点の「くるみ」や「たると」がまだまともな作品に見えてくるからものすごい。いやアニメの話で、原作がどうなのかは知りませんがね。



 どんな内容かというと、白痴のロリコン青年の所へ天から炉娘が降ってきまして、わ〜いラッキー!エエもんひ〜ろた〜!と舞い上がって宇宙まで飛んでっちゃってスリスリチュッチュッ楽しいな♪ってオハナシ。
 無論ストーリーなんぞは本作の眼目でも何でもなく、エンタテイメントとしてのキモはソフトエロ萌え方面と言いますか、まあ最近TV作品でも臆面無くやってる例のパターンね。
 何しろ白痴の主人公のまわりには白痴の王女とか白痴の幼女とか白痴のメイドとか白痴の巫女とか白痴のネコ耳少女なんぞがワラワラ蝟集しておりまして、彼女らの乳揺れとかハミ乳とかモロ乳とかビーチクツンツンとかパンチラとかパンモロとかモロ尻とかが百花繚乱。オマケに銭湯が舞台だからそれらを合理的に見せられて良かったねという、考えようによってはピンと一本筋の通った作品かもしれないな。



 だから冒頭くだらなくてつまらないとは書いたけれど、これはもう作る方も見る方もハナから面白さなんぞ求めていない類の作品かもしれず、そういう作品なればこそもうちょっとでも作画レベルを上げた方が良いんじゃないかなあなどというお節介はともかく、文芸面でどうのこうのと突っ込むのは適当でないと思う。
 まあ世の中にはオツムの弱い童貞坊やたちのフニャフニャしたリビドーを癒してあげるためだけのゴミクズ作品も一定数あってよかろう。
年のせいかあたしもすっかり丸くなっちゃったぜ。


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