No.38

モンスター佃煮レビュー・4

 モンスタームービー佃煮レビューの第4弾です。今回の作品はホンマにしょうむないです。キッチュな味わいすらないぞ。見たら泣くぞ。あたしは見たけど。


ミミック2

 「ミミック」は1997年に公開されたごくごく地味〜なモンスタームービーである。
 大々的な宣伝が打たれたわけでもなければ、有名俳優が出演しているわけでもない。ストーリーだってしごく平凡だ。だけどあたしはこの作品が大好きなのである。



 ニューヨークの地下街で猟奇的な殺人事件が頻発する。女流昆虫学者スーザンは、その犯人が、かつて自らが遺伝子操作によって生み出した新種昆虫「ユダの血統」ではないのかと疑いを持つ。
 責任を感じたスーザンは夫と共に調査に乗り出すが、彼らの行く手には、ロングコートをはおった不気味な殺人鬼の噂と姿が見えかくれするのだった。
 犯人はユダ昆虫ではないのか?
 真相を追って地下鉄構内へと降りた彼らの前に出現したのは・・・。



 というのがそのストーリーのあらましで、モンスターの正体に、ごくチープではあるが一種の「仕掛け」があり、それが作品全体に独特のミステリアスな緊張感を与えていた。

 またモンスター出現によって、日常と非日常を戸板返しのようにガラッと転換する手際も見事。
 営業時間の終了した直後の地下鉄ホーム。ほんの一瞬人の流れが途絶えた虚ろな時間と空間に、真犯人が朦朧と立ち現れるシーンのスリルは出色だった。
 つまり「ミミック」は、
大都会の一隅に人知れず出現する「真空」のような時空間(逢魔が時)を切り取って、ポンと見せつけることを作品の核としており、物語後半、舞台を遺棄された地下鉄路線という迷宮に移すことにより、その「真空」が膨れあがって主人公たちを取り込んでゆく不安感を演出している。観客は、自らの周囲にもそれと似た空間が存在することに思い当たってゾッとするワケだ。



 こういう、地味でも良いから、力の入れどころや見せ方を自分なりに工夫した作品作りっていうのが、特にモンスタームービーには大切だと思う。その伝で「ミミック」はなかなかの優等生であり、だからその続編がひっそりと公開されていることを知ったあたしは、性懲りもなくノコノコと見に出かけてしまったのでした。しかしこれが大失敗!



 この続編(「ミミック2」)は、前作にもチラッと登場していたスーザン博士の助手レミ(これも女流の昆虫学者)を主人公に据え、そのねじけた内面の闇を追っていく。そしてその闇に惹かれるように、新たな能力を身につけたユダ昆虫が現れて・・・という、ちょっと凝った趣向になっている。
でも全然つまんないんだよなあ。



 まず、レミ役のアリックス・コロムゼイ嬢が可愛くない。
 そりゃあ殺人鬼ホラーのヒロインみたいにオッパイがデッカイだけのギャーギャーうるさいバカ女を出せとは言わないが、今回はモンスターがヒロインをストーカーするというネタなんだから、もうちょっとでも美人を持って来なきゃ、「ああ、ヒロインが危ないッ!」ていう迫力が出ないんじゃないだろうか。
 アリックス嬢てばタレントのYOUが目ン玉むいたようなご面相の上、フラれて泣いている自分の顔をポラで撮ってコレクションするというサイコな役柄。プレスシートの表紙には彼女のアップが用いられているが、その表情はユダモンスターより怖い!子供に見せたら引きつけ起こしそうである。イヤだぞ、そんなヒロイン。



 そして何より、ユダ昆虫の演出がつまらない。
 そもそも前作は、上で書いたとおり、ユダ昆虫の特殊能力がストーリー展開上非常に重要なギミックであり、かつそれ自体が見せ場となっていた。しかもそのギミックは、良くできたマジックのタネ同様、一度分かってしまえば何ら驚くに値しないチープなものだ。つまり前作「ミミック」は、ある意味
一発芸みたいなネタだったのである。
 だからその続編を作るとすれば、当然同じネタは使えない。見せ方をガラリと変えなければならないはずだ。
 しかるに「ミミック2」には、そうした工夫のあとが全く見られない。ユダ昆虫には確かに新たな能力が付与されているが、それはあくまで前作のネタをちょびっと強化発展させたものに過ぎないのだ。
 「仮面ライダー」の新シリーズが、「今度のライダーはライダーキックがこれまでの一割二分増しの威力です」なんてウリだったら誰も納得しないだろう。「ミミック2」はマジでそんな感じに仕上げられちゃったハニャ〜作品である。



 例えパート2だって、見る者をオッと唸らせるようなモノを作ってやろうじゃないかという作家の意地や意気で、いくらでも面白い作品が作れるはずである。(「エイリアン2」を見るがよい!)
 その持ち合わせがないならば、せめて人が大切にしている作品には手を出さずにソッとしておいてもらいたい。この「ミミック2」しかり、「トレマーズ2」しかり、あたしが愛する佳作に泥を塗るスカ続編が多すぎるよ。
 んなワケで、監督のジーン・セゴンザックには、アルカイダの陣地に全裸で暴れ込み、
「『ターミネーター』冒頭のシュワちゃんだヨ〜ン!」などとテロリストの心をなごませるボランティア活動100日間を命ずる!


オクトパス

 以前に「スパイダーズ」というスチャラカ怪獣映画を作ったチームの作品らしい。
 地上波でかかったから見たのだが、いわゆる低予算のB級ムービーというヤツなんだろうという予想は大ハズレ!ランクで言えば、C級やD級や山のあなたもはるかに越えて、まあP級くらいですか。あまりのバカバカしさに、見れば不整脈が山盛り出て死にます。これと比較したら、上でクサしている「ミミック2」なんかさしずめ
アカデミー受賞作品ですぜ。



 ストーリーは、欧州で逮捕された凶悪なテロリストを米本土に潜水艦で護送中、その原潜が大ダコに襲われるというもので、後半はそのテロリストを奪還しようとするテログループと主人公が、洋上の豪華客船に舞台を移して渡り合う。
 前半はスパイアクション、後半はモンスターパニック&ガンバイオレンスというワケだが、往年の「ファィヤーフォックス」よろしく、一粒で何度も美味しい変わり玉的快作とはとても言えず、一粒で何度も
食中毒になっちゃうような気分。キャラの信じられないマヌケさ、ストーリーの超絶的な御都合主義、モンスターエフェクトのダメダメぶり、どれをとっても破壊力満点です。



 主役のタコは、どうやらキューバ危機の際に沈没した原潜に積載されていた核物質だか毒物だかによるミュータントらしいのだが、どうも設定があやふやで説得力に欠けている。CGもプロップワークもヘボいしなあ。
 彼は巨体なのでとてもお腹が減っているというのですが、それならとっととクジラでも捕って食べていた方が良いと思うんだけど、何故か執拗に原潜を襲ってくるのが奇妙だ。魚雷でボカスカ反撃されて痛い目に遭ってるのに、タコだけあってタコだなあ。
それともマゾなのか?
 人間側の主役は腰抜けのエージェントと色キチガイの女流学者と力馬鹿の原潜艦長だが、彼らが特段「生き残ろう」という努力をしなくても何故か勝ち組になっちゃう不思議。部屋の中でボーッとしているうちに、原潜の他の部署では大勢が溺れ死んだりタコに食べられたり逃げ出したテロリストに撃ち殺されたりしちゃうのだ。
 艦長は
 「我々は最善を尽くした。(大勢の犠牲者が出たことは)やむを得なかったんだ!」
 などと強弁するんだけど、そ、そうかなあ?たまたま安全な部屋をウロウロしていたことが「最善」かなあ。
 あげく彼らは、一刻を争う緊急事態下で、急にキレてつかみ合ったり、長々とどうでも良い説明を続けたり、はたまた和やかに談笑を始めたりと、突っ込めないもどかしさで見ている方が発狂しそうなパフォーマンスを繰り返す。ガチンコファイトクラブじゃないんだからさあ、頼むよもう。



 結局タコは主人公のカミカゼ爆弾攻撃で粉砕されるが、何故か主人公だけがその大爆発からケロッとして生還するミステリー。バカなだけに異常に頑丈なのか、ほとんど
キャプテン・スカーレットみたいな展開である。
 クルクルパーの艦長が彼を迎えて、
 「やるじゃないか!でも女に関しちゃ譲らないぜ!(いつの間にか女流学者を巡って三角関係が成立していたらしい)」
 なんて言うんだけど、何百人もの犠牲者を出してコイツらがたどり着いたオチがそれかと思うと、一筋の涙が頬を伝う。



 ところで見終わってから気が付いたが、テログループの大半を食べるわ千切るわ押しつぶすわで退治しちゃったのは、他ならぬタコ君である。つまり国際平和に貢献した殊勲者なんだから、爆殺しちゃうなんてヒドイわヒドイわ。あんたら仁義っちゅうもんを知らないのかよォ、アメリカさんよォ。


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