番外記事

キミは宇宙大怪獣を見たか?(2)

 
 
 「宇宙大怪獣ギララ」再現紙芝居の後編です。

 箱根山中に突如出現した大怪獣ギララ!

 その能力は?人類はどう立ち向かうのか?そして謎のUFOの正体は?・・・というところから、続きの始まり始まり〜!

 出現した怪獣は、残されていた足跡を鑑定した結果、やはりガンマ号の持ち帰ったタマゴから発生したものと断定されました。

 それがかくも巨大化したのは、電力等あらゆるエネルギーを養分として吸収するからのようです。

 大怪獣は箱根から東京へ向けて進撃を開始しました!

 避難する周辺住民と、無茶苦茶なスケールの怪獣という、いかにもな合成ショット。

 大八車を引く人が時代を感じさせます。

 避難民をズシンと踏んづける怪獣の足。

 初代ゴジラを想起させるカットですが、合成がマズくて実感もクソもありません。

 リーザ博士たちは、残されたタマゴのカラ(?)を分析し、そこに怪獣を撃滅する秘密があるかもしれないと考えます。

 そして怪獣を「ギララ」と命名したことを、どこか誇らしげに報告。

 コイツらには、自分たちこそが宇宙から大難を呼び込んだという自責の念のカケラも無いようです。

 ギララはついに東京へ侵入!

 このシーンはミニチュアセットもそこそこ気合いが入っていてイー感じ。

 首都高速上には戦車隊が布陣して砲撃を開始します。

 この戦車は走行も砲の旋回もする良くできたミニチュアですが、如何せんスケールが小さくて実感はイマイチ。

 ギララも口からボエッと火球を噴いて応戦!

 この火球発射シーンは、両頬のヒレがピクピク上下するなど、細かい演技が付けられています。

 空からは空自の栄光戦闘機(F-104)が来襲!

 止め絵で見るとカッコイイけど、操演技術が東宝とは天と地で、カクカクヘロヘロした頼りない飛びっぷり。

 栄光編隊はロケット弾を雨あられとブッ放しますが、そんなモンじゃギララはビクともしませんぜ。

 実際の栄光には対地攻撃能力はないはずなんですけどね。

 戦場上空へ何故かフラフラと迷い込んできたグローブマスター輸送機も、とばっちりを喰ってバラバラに。

 機長は自殺志願者か何かでしょうか。

 全世界で報道されるギララのニュース。

 画像は中国ですが、アメリカとかインドとかも映ります。

 てゆーかギララの身長体重を誰が測定したんだっつーの。

 東宝のスーパーメカを意識したらしい、ヘンテコな光線砲車も登場!

 しかしミニチュアがあまりに小さく、光学合成もショボくて、迫力のカケラもナッシング。

 当然ながら、そんなヘッポコビームはギララには通用しないのだ。

 光線砲車隊はシッポの一撃で吹っ飛ばされて全車丸焼けに。

 あえて言おう、雑魚であると!

 暴れるギララのすぐ上を戦闘機がフライパスする大胆な特撮シーン。

 とか書くと何だかカッコイイ気もしますが、戦闘機が三輪車みたいな操演スピードなのでマヌケな印象です。

 ちょっとウルトラ風にも見えますね。

 タマゴのカラを分析したリーザ博士は、そこにあらゆるエネルギーを遮断する物質が含まれていることを発見し、ギララニュウムと名付けました。

 これを利用すればギララを無力化出来そうですが、さらに詳しく研究するためには、真空中で実験をしなければなりません。

 協議の結果、皆でもう一度月基地へ行こうということに。

 どんだけ行ったり来たりすんだよコイツら。

 東京を破壊し尽くしたギララは、群馬を通過して猪苗代方面へと進出。

 箱根から休まずずっと徒歩ですから、その元気ハツラツぶりは異常。飛脚かギララ。

 リーザ博士らは、月基地でギララニュウムの精製に成功しました。

 また調査の結果、月の土中には大量のギララニュウムが埋蔵されていることも判明!

 もはや御都合主義がどうのとツッコムことすら虚しくなるトホホ展開。

 何なんですかこの映画はもう。チャージマン研ですか。

 世界各国は、自国にギララがやって来ては困るので、日本に原爆を撃ち込もうと画策中(オイ

 しかしアメリキからは「二度と日本に原爆は落としたくない」という有難〜いお言葉が。

 宗主国の情けとお袖にすがってガンガれ日本!

 ギララニュウムを確保した一行は、ガンマ号で月からの帰途につきました。

 しかしまたまた電子装置が機能しなくなり、航行不能に陥ってしまいます。

 周囲にUF0の姿は見えないのに、一体何故?・・・・

 原因は何と、積み荷のギララニュウムでした。

 あらゆるエネルギーを遮断するという特性が、ガンマ号のメカニズムをも機能不全にしていたのです。

 このままでは地球に戻れない!

 一行は、厳重に遮蔽された原子機関室へギララニュウムを入れ、その特性を封じようとします。

 一つ間違えば大爆発を起こすとか何とか、なるほど当事者には大問題でしょうが、視聴者にとっては実にどーでもイイやり取りが延々続くのですわ。

 一方ギララは、どこぞの原発を破壊して、漏れだした放射能を吸収!

 散らかしたモノは自分で片付ける、実にクリーンな生物です(^^)

 エネルギーで満たされた身体は強く発光を始めて・・・・

 赤く輝く光球に変〜身!!

 お前はベムラーを追ってきたウルトラマンかっつーの。

 光球は宙へ舞い上がり、猛スピードで飛び回ります。

 通過した直下の都市は、エネルギーのあおりを食って潰滅状態に。

 やがて湖に落下した光球は、お水を吸って(?)ギララの姿に戻ります。

 カップ麺というかシーモンキーというか、とにかく固まったりフヤけたりが好きな怪獣です。

 このシーンのギララはギニョール撮影で、そのぎこちない動きがかえって不気味さを出しています。

 ギララニュウムを遮蔽して機能を回復したガンマ号の前に、またもUF0が出現!

 作り手としては、危機、また危機という緊迫感を演出したいのかもしれませんが、見ている方は「もうエエて」とツッコミを入れたいウンザリな心境。

 ちなみに松竹のこうした宇宙特撮は、ホリゾントがライトを反射してテカリが出ており、空間の広大さが表現できていないことが難点です。

 ギララは進路を反転し、富士山麓の宇宙開発局へ向けて進み始めました。

 そこには原子エネルギーがあるからだというんですが、そんなら猪苗代くんだりまで遠出せずに最初からそこを狙えよ、なんていちいちツッコンでいてはギララは視聴できません。

 ガンマ号はUFOを振り切り、ようやく地球に帰還しました。

 ギララニュウムを自衛隊に届ける一方、宇宙開発局をギララから守るため、皆で原子燃料を運び出そうと話がまとまります。

 ところが資料を取りにノコノコ戻ったリーザ博士は、ギララによって倒壊した研究棟の下敷きに!

 さあまた危機だ!

 別に氏んでもイイけどこんなバカ女。

 ここが最後の破壊スペクタクルとばかり、ギララも大ハッスル(死語)!

 もの凄いコンビネーションブローで施設を中天高く吹っ飛ばします。

 まるでウイニング・ザ・レインボーで、思わず過去カットを一面に切り貼りしたくなりますわ。

 痛いイタイと喚くリーザ博士、もっとテコを持ってこいという救出組の怒号で、研究棟内は大変な騒ぎ。

 ここでハラハラドキドキしてくださいという演出意図は分かりますが、例によってドリフにしか見えません。

 志村うしろー!!

 このままでは皆の命が危ない!

 佐野キャプテンと宮本通信士は、運び出した原子燃料をエサに使って、ギララを研究棟から遠くへ引き離そうとします。

 ガイガーカウンターがガリガリいってる物騒な燃料を、佐野さんが荷台で抱えて固定するというもの凄い運び方。まるで落語の宿替えです。

 作戦は図に当たり、ギララは原子燃料を積んだジープを追ってきました。

 怪獣が車を追って広大なセット内をノシノシ行くという映像は斬新ですが、何か「ゴジラの息子」を思わせる牧歌的な雰囲気が・・・・

 二人はジープを全速で走らせますが、箱根〜猪苗代間をサクサク往復するギララの俊足はハンパありません。

 たちまち(絶滅語)ジープに追いついて襲いかかり・・・・

 「ボエーッ!」とパンチ一閃!!

 ジープは大破炎上、佐野、宮本両氏も宙に吹っ飛ばされてしまいます。

 ちなみに「ショックを与えると大変危険」な原子燃料は、ギララが塩梅良く吸収してくれて汚染は起こらなかったようです。

 まさにエコ怪獣ギララ。国家に一匹ぜひ欲しいぞ。

 「佐野、宮本両名は、ギララを基地から遠ざけるために決死的な努力を試み・・・(中略)・・・今、ギララを倒す唯一の手段は、諸君の勇気と、最高の操縦技術で、ギララニュウムを一刻も早く怪獣にぶつけて・・・・」

 一刻を争う時に、どーでもイイ訓辞を延々と垂れ流す脳天気な自衛隊司令官。

 聞かされるパイロットも大変でしょうが、視聴者だってもう退屈で死亡寸前。

 2人は崖下に転落したものの、軽傷を負っただけで無事でした。どんだけ頑丈なんだよオマイら。

 首尾良く救出されたリーザ博士、そして道子さんが、2人の身を案じて駆け付けます。

 ここが勝負所!と思い切った道子さんは、リーザ博士の目の前で佐野さんに抱き付いてスリスリ攻撃。

 「やったあ!」という表情の道子さんに対し、佐野さんはいかにも「アチャ〜」って感じで顔を背けます。

 この男、明らかにリーザ博士に乗り換えるか、あるいは二股かけようというつもり満々なのです。

 女はみんなクソビッチ、男はカサノバと尻と基地外医者。全くロクなキャラの出てこない映画であります。

 ところが道子さんのこの攻撃はバッチ成功したようで、リーザ博士はガビーン!と茫然自失。

 どうやら日米ビッチ対決は日本の淫売が寄り切り勝ちのようです。

 そこへようやく駆け付けた自衛隊機が、ギララニュウムを仕込んだロケット弾で攻撃を開始!

 泡状のギララニュウムに表皮を侵され、ギララは初めて苦悶の叫び声を上げます。

 シェービングフォーム、もといギララニュウムで全身を包まれたギララはエネルギーの供給が利かなくなり、次第にヘロヘロに。

 やがてその巨体はジワジワと縮み始めて・・・・

 皆の見守る中、元のタマゴ状物体へ戻ってしまいました。

 外人博士のポーズが、何だか小便小僧みたいで可愛いシーンです。

 ギララを一時的に無力化することは出来たけれど、完全に死滅することは不可能だと語るリーザ博士。

 いつまたギララニュウムの殻を破って暴れ始めないとも限りません。

 そんな物騒なモノを地球に置いておくわけにはいかないと皆は相談して・・・・

 無人ロケットにギララのタマゴを積み込み、宇宙の彼方へ放逐することに。

 ヤヴァイものは取りあえず人目に付かない所へ捨てたり隠したりしてしまえという、いかにもこの国らしいステキな解決法。

 事件は終結しましたが、恋の負け組となったリーザ博士は独り黄昏れています。

 外人博士は、

 「キミの気持ちをちゃんと佐野に伝えたのかね?愛には勇気も必要なのだよ」

 と諭しますが・・・・

 リーザ博士は応えて曰く、

 「ええ分かっています。
ギララがそのことを教えてくれました

 
ほ、本当??

 え〜とそれはつまり、「火の玉になってそこら中ブチ壊しまくってでも愛する人を勝ち取れ!」という、物騒な恋愛観を学んだってことなのでしょうか?

 一方のバカップル2人組。

 勝ち誇って晴れ晴れとした表情の道子さんと、「まあしばらくはこの女でガマンしとくかァ」という佐野さんのショッパイ表情が対照的。

 ギララに殺されたり、家を焼かれたりした人も大勢いるでしょうに、この2人はそんなことには全く思い至らないようです。

 元はと言えば、何もかもコイツらのせいなのに・・・・

 「あまりにも〜2人は小さい〜♪」という、佐野さんの短躯へのイヤミとしか思えないEDテーマの流れる中、脳天気に手を取り合うバカップル。

 しかし御油断めさるなお二人とも。

 ギララから「略奪愛のススメ」をレクチャーされたリーザ博士の大逆襲が、これから始まるのですゾ。

 遠ざかっていく無人ロケットをカメラは追い続け、そして「終」の文字が。

 「(喜国雅彦先生風に)物語はここで終わりである。ギララの正体も、UF0の真意も、火星探査失敗の原因も明らかにならなかったわけである。このように宇宙空間というものは、我々常人の考えでは推し量ることのできないくらい、恐ろしい世界なのである」

 チャンチャン!!

 「宇宙大怪獣ギララ」の再現紙芝居、如何でしたか?つまらなかったでしょう〜?(^^)

 今改めて本作を見ますと、特撮が特にショボイという印象はありません。むしろ、怪獣映画を作ったことのない会社にしては相当に頑張っているとすら言えます。ギララや宇宙船のデザインも悪くないですし。

 しかしそうした頑張りを全てスポイルしちゃってるのが、脚本のしょうむなさです。正直頭痛がします。

 昔の怪獣映画というのは、例えば王者たるゴジラシリーズにしたって、企画立ち上げから2〜3ヶ月、ヒドイ時には3週間くらいで全部ヤッツケちゃうこともザラだったと聞きます。

 だから後発のギララは尚更、お金も時間も潤沢につぎ込めたとは言えず、キビシイ制作環境だったことが想像されます。

 しかしそれにしても、およそ一回でも推敲をしたとは思えない、この脚本のヨモスエぶりはないでしょう。

 ストーリーもキャラ立ても支離滅裂ですが、それで支離滅裂なりの面白さが出ているワケでもなく、単にデタラメで退屈なだけ。これではスペクタクルシーンがどんな出来でも楽しめるわけがありません。

 それは極言すれば、本作で「何を見せるのか」というビジョンが、製作陣には全く欠落していたことの証左でもありましょう。

 描きたいモノ、見せたいモノがそもそも無いから、テキトーに宇宙船とか怪獣とかの絵を撮って、それらをデタラメに継ぎ合わせただけの作品になってしまっているわけです。

 松竹がやるべきだったのは、光瀬龍氏らビッグネームを監修に迎えての箔付けなどではなく、後発だからこそ、怪獣映画というジャンルは何が面白いのか、何を核に描くべきなのかを熟考することだったはずです。

 そこが曖昧故に、完成フィルムもまた全体がピンボケな印象なのであり、つまり企画の立脚点からして大ゴケは約束されていたと言えましょう。

 当時すでに邦画界は斜陽の坂道を転げ落ちつつあったわけですが、こんなモノをこしらえていちゃあ、そりゃ落ち目にもなるでしょう。

 世の流行り廃りは別として、創作ってモンを甘く見てるヤツらに光明なんかあるはずないよって気分にさせられる凡作でありましたとさ。



 追記・ヒドイと言えば、いずみたく氏の音楽も、このビッグネームとは思えないトホホぶり。

 主題歌、挿入歌がロクでもないのに加え、BGMが2〜3種類しかなさそうなのはどういう手抜きなんザマスか。

 ギララが暴れるシーンでは終始同じBGMがかかっており、映画の平板な印象を助長しています。コレ聞くだけでウンザリすること請け合いですわ。


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