No.89

このアニメはこう見やがれってんだ!(47)

 

ARIA The ANIMATION(アリア・ジ・アニメーション)

 
 人気コミックのアニメ化作品だそうだが、「死ぬほど退屈」という言い方が比喩では済まない、地獄のような平板さが強烈。何度か気を失いかけましたよあたしゃ。



 この第一期シリーズを見る限り、本作は「この世は無常であるが故に、あらゆる一瞬が尊く愛おしい」ということをテーマとしているようだが(あかりちゃんが、切なさに矢も楯もたまらず、橋の上で友人に手を振るシーンに象徴されている)、そこへ導くための装置がチープこの上なく、文芸としての迫力を毫も持ち得ていないことは残念だ。



 装置の貧しさという伝で言えば、そも
「ネオヴェネツィア」という舞台設定からしてダメだコリャ感無限大。
 現実のヴェネツィアは、そこに満ちている猥雑なエネルギーこそが魅力なのに、ネオヴェネツィアってば人影すらもまばらなスカスカ普請なんだもんな。



 いやこれはオハナシなのであって、仮想世界を現実と比して難じるのは野暮だという向きもあろうが、ならば最初から全くオリジナルな舞台を創り出せば良いのであり、安っすいファンシー商品じみたハリボテ都市をでっち上げて喜んでいる制作者(原作者?)は、あまりにも屈託がなさ過ぎよう。



 それでもまあキャラ絵はカワイイですし、作画も美術もまずまず不足のない出来だから、
こういうのを見て「癒される」とかフニャけたこと言いたい人は言ってればって感じですか。あたしなら磔刑になったって言いたかないが。
 

 

サムライ7

 
 言わずと知れた「七人の侍」のアニメ版リメイク企画で、80年代ロボアニファンにとっては馴染みの深い演出家・滝沢敏文氏が監督を務めている。


 
 原典「七人の侍」は途中で休憩が入るような長尺だが、TVアニメシリーズに仕立てるには逆に短すぎるから、オリジナルの展開や登場人物を追加することにより、26本の連続ドラマとして再構成しているのが特徴だ。



 その追加要素を「斬新だ、面白い」と感じるか、「いや余分なカサ上げに過ぎない」と感じるかによって、本作への評価はまず二分されようが、あたし的にはドチラかと言えば後者であろうか。
 何故ならそのために、原典のクライマックスである村での決戦が、中盤のショボイ1エピソードに成り下がってしまっており、それは全く過ちであろうと考えるからだ。


 
 例えばボクシングを見に来た観客に、「今日は選手たちの幼少期を映したホームビデオをタップリ上映します」などとサービスのつもりで言ったところで、「そんなモノはいいから早く試合だけを見せろ」とブーイングをかまされるのがオチであろう。
 それと同じで、
原典最大の見せ場を無視したり改変したりするくらいならば、最初からあえて「七人の侍」をリメイクしようなどはヤメておけばよろしい。
 同じ翻案でも、「荒野の7人」が長く時代を越えて愛され続けているのは、観客が見たいモノ、故に見せるべきモノを外していないからである。



 もっともそうだからといって、「サムライ7」という作品自体が、即ち絶対的につまらないというわけでもない。
 いやむしろ、最初から最後まで、そこそこ退屈せずに楽しめる作品とすら言える。



 それは本作が、ややこしいテーマやメッセージは一切盛り込まず、徹頭徹尾娯楽性だけを眼目として作られているからだろう。
 レトロな連載少年マンガよろしく、展開が多少デタラメだろうが強引だろうが、見ている人をとにかく退屈させないように!という制作者側の心配りが、作品に上手く緊張感や躍動感を与えているのだ。
 それは「引き」の巧みさに特に顕著で、毎回「次はどうなるんだろう?」「早く続きが見たいな!」と思わせる迫力が出ていて感心させられた。



 だがそうした面白さは、まさに連載マンガのフォーマットをガワとして用いているからこそのものであって、であるならば中身は別に「七人の侍」でなくとも良かったということになる。



 ひっきょう本作は、「伝説の洋食屋の味を再現!」なんつって大仰に売り出しながら、中身は限りなくフツーっぽい冷凍ハンバーグ食品とでも評せましょうか。
 
べつに不味くはないけれど、「これでなくては!」と感動する消費者はまずいない、10年も経ったら誰も存在すら覚えていないかもしれない、のっぺらぼうなマスプロダクツ。
 せっかくアニメ作品として世に問うんだから、もうちと理想を高く持ってお仕事をして欲スィなって思うのん。



 追記・ふみちゃんがカワイイ巫女さんというヒロイン役で出演しており、やったあ良かったねふみちゃん!とお祝いしたくなったのも束の間、見てみればオツムが弱くて色キチガイでジジコン(!)という三重苦背負いまくりの可哀想キャラ。
 
彼女が演じれば何でも薄幸になるという、貧ちゃん顔負けのふみちゃんパワーにただただ唖然。でも大好きです。恋してます(●>∇<●)



 追記2・斎藤千和氏はさすがの好演!彼女の演じるロリと菊千代との交流だけはイイ味が出ていて泣かされました。



 追記3・ガンダムZZの小林誠氏がメカデザインを担当して話題になったが、出て来たモノはまんまジ・オとバウンドドックであり、その十年一日ぶりとド厚顔さには、もはや腹が立つよりも感心させられちゃったり。
こういう人に、あたしはなりたい。



 追記4・そのジ・オが、本作では野武士の指揮官級ということになってるんだけど(巨大なロボ型サイボーグ?)、この設定はマズかったと思う。
 原典では、我が物顔に振る舞っていた野武士らが、やがてヒイヒイ言いながら村を逃げ出そうとするのが痛快なのに、ジ・オにどう演技を付けたところで、惨めに敗走する絵になりっこないではないか。
 見た目雲つくような大怪獣だし、そも表情ってモノが無いし、百姓が何百人かかろうが、怯えたり逃げ出したりするかっつーの、ジ・オ。


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