番外記事

キミは荒ぶる巨人を見たか?

 
 
 毎度、映画を紹介すると言うより単にdisってんじゃねーのかとお叱りを受けているダイジェスト紙芝居シリーズです。

 あの「大魔神」の元ネタとして有名な

「巨人ゴーレム」(1920)

 
を一度見てみたいなあとかねて思っていたのですが、安価なDVDが発売されていることを最近ようやく知り、尼で取り寄せてみました。

 本作は「カリガリ博士」や「メトロポリス」なんかと並ぶドイツ表現主義の傑作なのだそうですが、映画の歴史にも表現主義にも無知なあたしが見てみますに、「変態コスプレ親父vs超絶クソビッチ・ゲットーの戦い!!」みたいなヘンテコ映画に思えました。
 

 以下にそのストーリーを紹介してみますが、無知故にトンチンカンな点も多々あるでしょうことは平に御勘弁m(__)m

 ちなみにDVDの画質は、100年前の映画としては十分視聴に堪える美しさで、商品としてはなかなか良いのではないかと思います。

 昔、とある国(ドイツかな)のオハナシです。

 その国にはユダヤ人のゲットーがあり、中でも一際高い建物の屋上で、毎夜星の観測をしている人物がいました。

 その人物の名はレーフ司祭。

 偉大な占星術師で、また強力な魔術師でもあり、ユダヤの民からは大きな尊敬を寄せられています。

 その彼が、星々の動きに凶兆を読みとることから物語がスタートします。

 観測台から降りてきたレーフ師は、自分の娘ミリアム(向かって左)と弟子(向かって右)にこう告げます。

 「我々ユダヤの民に何か大いなる危機が迫っている。祈りを捧げないとならない」

 
何そのフワッとした警告。

 ちなみにこの娘と弟子は婚約者同士という設定のようです。

 「迫ってくる危機」が何だかは分かりませんが、とにかく備えが大切だと、レーフ師はユダヤの秘法を使うことにしました。

 その秘法こそが
ゴーレムで、粘土製の巨人に魔神の魂を吹き込むことにより、あらゆる敵を打ち砕く人造人間が生まれるのだとか。

 ←画像はその設計図ですが、これまたフワフワのアバウトな図面です。

 一方この国の宮廷では、ルホイスという皇帝(画像の人)が、ユダヤ人に対する勅命をしたためていました。

 その内容は、

 「オマイらユダヤ人は、我が国の市民から大変評判が悪い。いてもらっては迷惑なので、即刻国外へ退去するように」

 という無慈悲なモノ。

 レーフ師が予言した「大いなる危機」とはこのことだったようです。

 ルホイス皇帝の書簡をゲットーに届けに来たのはフロリアンという騎士でした(画像、向かって右側の人)。

 若くて男前ですが、常に踊るような腰つきで歩く、いかにもチャラそうなヤツ。

 サイレントでなかったら、「あげぽよ〜」とか「きゃわゆいネェ〜」とか言い出しそうでムカムカしますぜ。

 ところがレーフ師の娘ミリアムはフロリアンを一目見て、

 「あらイケメンの騎士様が来たわ!」

 と大はしゃぎ!

 どうやらこの娘、美人ではあってもオツムの方はカラッポのようです。

 フロリアンの方でも目ざとくミリアムを見つけ、花を手にとって爽やか青年をアピール。

 
オマイはマシュマー・セロかっつーの。

 互いに運命を感じ合ったのか、2人はいきなりラブラブモード!

 往年の「キックオフ」よろしく、「由美ちゃん」「永井クン」、もとい、「ミリアム」「フロリアン様」なんつって2人だけの世界へ突入な〜のだ。

 さらにあるまいことか・・・・

 すかさずオッパイまで触っちゃったりなんかして(広川太一郎)、「あ〜ん、らめェえええ〜、でもイイわ〜」って、どういうパン助ザマスかこの娘わ!!

 一方でフロリアンは、レーフ師に対してはこの素っ気ない態度。

 ルホイス皇帝の勅命を伝え、国から出ていくように勧告します。

 レーフ師は、かつて占星術を用いて皇帝に協力した功績を訴え、必死に勅命撤回を嘆願します。

 交渉の結果、近く開催される宮廷パーティーでレーフ師が何か余興を披露し、それがルホイス皇帝の御意に適えば、ゲットーが存続されることとなりました。

 勅命撤回と言うより執行猶予ですので、まだ安心は出来ません。

 レーフ師は粘土まみれになってゴーレムを作り続け、そして・・・・

 ついに完成!これがゴーレムです!!

 無敵の巨人・・・にしては何だか可愛らしい印象のオカッパ頭・・・ていうかコレってもう・・・

響・長友と完全に一致!!

 ゴーレムの生命力は魔神アスタロスの魂であり、それが込められたペンダント(逆ペンタ型をしている)を胸にはめ込むことによって起動します。

 このあたりは絵的に後のアストロガンガー風ですが、無機物に魂(コントロールシステム)が合体して動き出すというコンセプトは、マジンガーに代表されるスーパーロボットの遠い始祖と言えるのかも・・・・

 さて苦労して造り上げたゴーレムですが、当面は戦いに使用する必要が無くなったため、レーフ師は色々とろくでもないことに利用し始めます。

 
ゴーレムのしょうむない利用法・その1

 薪割り!

 ゴーレムのしょうむない利用法・その2

 井戸水汲み!

 ゴーレムのしょうむない利用法・その3

 近所へお買い物!


 買い物カゴをヒジにかけた様子は、そこらのオバハンと何も変わりません。

 すっかり家事ロボットにされちゃった魔神アスタロスや哀れなり。

 とか何とか遊んでいるうちに、いよいよパーティーの当日がやってきました。

 レーフ師はゴーレムをお供に連れて宮廷に乗り込みます!

 居合わせた貴族や騎士らは、ゴーレムの異様な姿にビックリ仰天!

 しかし害を為すものではないと説明されて一安心。

 ルホイス皇帝もゴーレムに興味津々です。

 とは言え、それで退去命令を撤回するほどではなく、もっと面白い余興を見せよとレーフ師に命じるのでした。

 一方騎士フロリアンは、パーティーのドサクサに紛れて宮廷を抜け出し、ミリアムの元へ駆け付けました。

 待ってましたとばかり、ウキウキして彼を迎え入れる淫売女。

 レーフ師は偉大な魔術師かも知れませんが、娘の教育に関しては全くダメ親父だったようです。

 ブチュブチュチュパチュパヌルヌル〜!

 って寸刻も惜しいとばかりに絡み合い、噛み付くようにキスをし始めるバカップル。

 コイツらのオツムの中って、さだめし濁りのないピンク一色なんだろうな・・・・

 場面は再び宮廷のレーフ師。

 「それでは皇帝陛下の御命により、魔術を用いて我がユダヤの歴史をお見せいたしましょう。しかし大変危険な術なので、最中は一切の声を立てないでください」

 仰々しい前口上に続き、何やら呪文を唱え始めると・・・・

 レーフ師の頭上に、何処かの光景を映し出したスクリーンが現れました。

 念写というか念動画というか、そういう類の魔術のようです。

 映画など無かった時代のオハナシですから、みんな驚いて見入ります。

 映っているのは、砂漠を移動していく大勢の人の列です。

 つまりは出エジプト記ということらしく、なるほどユダヤにとっては歴史上の一大イベントに違いありません。

 手前に立つオッサンはモーセでしょうか。

 ところが一体何がツボだったのか、ルホイス皇帝はこの映像を見て、

 
「スゲー、超ワロスwwwwww!!」

 と大ハシャギ!

 ジャマくさいユダヤがヒドイ目にあってメシウマ〜ということでしょうか。

 他の皆も、ルホイスの尋常でないテンションにつられて大爆笑!!

 
クソみたいなネタでも取りあえず笑っとく、まるでエンタの観客みたいな低レベルぶりであります。

 「声を立ててはイケナイと言ったでしょう!お静かに!」

 レーフ師は必死に制止しますが、もうすでに手遅れ。

 魔力の反転位相バースト現象(仮称)が起こり、宮殿はガラガラと崩壊し始めます。

 アチコチで柱がブッ倒れて押しつぶされる人が続出!

 会場は阿鼻叫喚のるつぼと化します。

 ルホイス皇帝はレーフ師に、

 「何とかしてくれ!助けてくれれば望みは何でもかなえるから!」

 とトホホな懇願。

 レーフ師はシメタとばかり、すかさずゴーレムに出動を命じます!

 バンガオー!!

 と落ちてきた梁を受け止める無敵の巨人!

 本編中唯一と言って良い、ゴーレムのゴーレムらしい有効利用法です。

 これで宮殿の崩壊は収まり、皇帝たちは命拾いしました。

 しかし考えてみればこの大騒動、全部レーフ師のマッチポンプのような気もしますが。

 ルホイス皇帝は約束通りにゲットーの存続を認めてくれました。

 レーフ師はゲットーに飛んで帰り、この朗報を市民に報せます。

 街はたちまち歓喜の声で沸き立ちました。

 そんなことを知らないバカップル2人組。

 何か激しい運動(笑)を数ラウンド終えた後らしく、疲れ切って爆睡中。

 
イイのか?それで本当にイイのか?チミらの人生!!

 「レーフ師マンセー!ユダヤマンセー!」

 って市民の興奮はますます高まり、通りは人で埋め尽くされてお祭り騒ぎ。

 ブカブカドンドン楽しいな♪

 表があまりに騒がしいので、ようやく目を覚ましたアホ2人。

 お忍びで来ているフロリアンは、人に見つかるわけにはいかず、外に出る機会を逸してしまいます。

 騒ぎが収まるまでここでジッとしていようと話し合う2人。

 
人目があってラブホから出るに出られない不倫カップルみたいです。

 レーフ師はゴーレムを連れて自宅へ戻りました。

 ところが不意にゴーレムの形相が変わり、

 「お前たちに手を貸してやったのだから報酬をよこせ!オレは血が見たいのだ!」

 などと物騒なことを言い立て始めます。

 狂ったのかゴーレム!

 ていうか・・・・

もう本当に一致!!

 レーフ師はあわててゴーレムのペンダントを取り外し、無力化しました。

 一体何故、ゴーレムは凶暴化したのか?

 レーフ師が改めて秘法の書をチェックしますと、

 「ゴーレムを用いる者は気を付けよ。やがて魔神アスタロスの魂が暴走し、言うことを聞かなくなるぞ」

 とか何とか
使用上の注意が書いてありました。

 コレはヤヴァイとばかり、レーフ師はすぐさまゴーレムを廃棄しようとしますが、興奮した市民らによって、慰労のパーティーへ連れて行かれてしまいます。

 一方レーフ師の弟子は、ミリアムのところへやって来て、

 「お父さんに感謝する市民のパーティーが始まりますよ。一緒に参加しましょう」

 とドア越しに誘います。

 未だフロリアンと一緒のミリアムはすっかり狼狽え、

 「私はまだ身支度中です。あなたは先に1人で行って下さい」

 と訴えますが、弟子はイヤ一緒に行くと言って譲りません。

 チャラいフロリアンもイヤだけど、この弟子もしつこくて図々しくてイヤな男。

 扉の向こうにフロリアンの気配を察知し、弟子はようやく婚約者(ミリアム)の裏切りに気がつきました。

 ガビーン!

 てコントみたいな顔になりつつ、弟子は嫉妬に猛り狂います。

 弟子は放置されていたゴーレムに駆け寄り、ペンダントをはめて起動させました。

 「我々ユダヤの名誉にドロを塗るヤツがいるぞ!懲らしめてくれ!!」

 弟子の訴えに、雄々しくバンガオー!と応えるゴーレム!

 てなワケで、

 
ゴーレムのしょうむない利用法・その4

 間男退治!!

 さっきから血を見たがっていたゴーレムはノリノリで暴れ出しました。

 怪力でドアを押し破り、セクロス狂いの若い2人に襲いかかります!

 ミリアムは恐怖のあまり失神してしまいました。


 だけどフロリアンはさすがに腐っても騎士!

 果敢に反撃を試み、ゴーレムの胸に短刀を突き立てます。

 しかし元々粘土で出来たゴーレムはビクともしません。

 
強いぞゴーレム!

 為すすべのないフロリアンは、ついに屋上の隅まで追い詰められてガクブル状態((((;゚Д゚)))

 ザマァ!とは思いつつ、しかしなるほどイケメンだなオイ。

 そんなチャラ男やっちまえ!

 という観客の声援に応えて・・・かどうかは知りませんが、ゴーレムはフロリアンをフン捕まえ、躊躇無く屋上から投げ落としてしまいます!

 このあたりの無情っぷりは、後の大魔神に通ずるモノがあるようにも思えます。

 哀れな騎士様の御遺体ナリ。

 クソビッチに引っかかったりしなければ、これからもチャラチャラ楽しく生きていけたでしょうに。

 人間どこでどんな最後を迎えるハメになるか、マジ分かりませんね。

 首尾良くフロリアンを片付けたゴーレムは、失神したままのミリアムに覆いかぶさってウヘヘヘへ〜と良からぬ表情に。

 騎士はコマすわ、泥人形までムラムラさせるわ、ミリアムってば全くスゲェ女だお。

 実はこのゴーレム、適役が見つからなかったんだか何だか、監督のヴェゲナー氏が自ら演じています。

 加えてミリアム役のリューダ・サルモノバさんは、ヴェゲナー氏の奥さんなんだとか。

 要するにこの映画、ビッチ役を演じる奥さんにダンナが発情するという、
それ何て倒錯シチュプレイ?みたいな。

 ←ちなみにこのどアップは長友よりもハナ肇に似てますな。

 ミリアム危うし!

 弟子はあわててゴーレムを制止しようとしますが、巨人はもう完全に暴走モード!

 ついには火のついた薪を振り回して暴れ狂います。

 火はそこら中に燃え移り、やがてレーフ師宅全体が炎に包まれました!

 家屋の密集しているゲットーのこと、このままでは類焼が広がって全滅してしまいます。

 レーフ師はまたもや魔術を行使し、サイキックバリヤー(多分)で火災を鎮火しました。

 偉大なレーフ様マンセー!と、またまた感謝を捧げる市民たち。

 
元はと言えば全部このオッサンが悪いような気もしますが。

 ゴーレムはミリアムをさらって町はずれまでやって来ました。

 ここでエッチな狼藉に及ぶのかな?と思いきや、何故か不意にミリアムへの興味を失ったらしく、彼女を放置してスタスタと歩み去ってしまいます。

 そこへミリアムを探していたレーフ師らが駆け付け、彼女は無事に保護されました。

 安堵するよりも、ガカーリする視聴者のが多そうですが。

 意識を取り戻したミリアムに、弟子が語りかけます。

 
「フロリアンは死にました。遺体は燃えてしまって証拠は残りません。あなたの行いについて、私は誰にも言いません。ですからあなたも私を許してください」

 まるで犯罪者同士の取り引きみたいですが・・・・

 「おお勿論よ。私の方こそゴメンナサイね」

 とミリアムが応じ、目出度く元サヤだそうです。

 あのなあ、オマイらなあと、草葉の陰でフロリアンが泣いてること必定。非道いヤツらだよホント。

 一方ゴーレムは、大門を開けてゲットーの外へ出てしまいます。

 このシーンなんかは、城門を押し破る大魔神とポーズまでソックリですね。

 丁度そこで遊んでいた子どもたちは、巨人の姿に驚いて一斉に逃げ出しました。

 ところが1人だけそこに居残ったロリは、ゴーレムを怖れる風もなく、ニコニコして手を差し伸べます。

 その無垢さに打たれたのか、あれほど凶暴だったゴーレムも思わず柔和な笑顔になり、ロリを愛おしそうに抱き上げます。

 後の映画「フランケンシュタイン」にもオマージュと思われる場面がありますが、なるほどここはなかなか良いシーンです。

 
まあ今日日でしたら「不審者による女児抱き上げ事案が発生しています」とか言われちゃいそうですが。

 ロリの無邪気な手は、

 「コレなあに?」

 というようにゴーレムのペンダントをまさぐり、それを取り外してしまいました。

 生命力を失ってその場に昏倒するゴーレム!

 
ロリつえー!ロリ無敵!というのは100年前から変わらないエンターテイメントの基本文法のようです。

 そこへ市民らが駆け付けてゴーレムを回収し、ようやく事件は終息へ・・・・

 「エホバの神は、本日三度もの奇跡を起こして下さいました。皆さん神を崇めましょう!」

 などと力技でまとめに入るレーフ師。

 三度の奇跡って・・・・

 一度目はゲットーの存続実現、二度目はゴーレムの無事回収として、三度目は何でしょう?

 自身が火事を消し止めたことかな?オイラって奇跡の英雄じゃね?ってこと?

 画面にヘキサグラム(六芒星)が浮かび上がって終幕です。

 このラストシーンや、中盤の魔術映像など、合成技術がシッカリ導入されていることには少しく驚きました。

 野暮なツッコミだらけの紙芝居を最後までご観覧いただき、まことにありがとうございましたm(__)m


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