番外記事

キミは虫の叫びを聞いたか?(2)

 
 
 映画「昆虫大戦争」再現記事の後編です。

 米軍が駐留している亜南群島・・・・そこに墜落した爆撃機、消えた水素爆弾、大量発生する毒虫・・・・様々なナゾと、事件に巻き込まれた人々の運命が明らかになります!・・・・多分。

 「キミ(妻)と赤ん坊のために、ボクは逃げるぞ!」

 そう吹いて逃走したジョージは、その足で愛人アナベルの家へ逃げ込み、さっそくセクロス三昧。


 どうもこの人は40秒以上前のことは覚えていられないようで、まるでカミーユ・ビダンみたいです。

 そこへ、武装集団の面々が、誘拐したチャーリーを連れて入ってきました。

 コイツらは共産側のスパイで、チャーリーから水爆の行方を聞き出して奪取し、ソ連へ送ろうとしていたのです。

 アナベルは彼らから資金提供を受け、ソ連軍のために毒虫の研究・繁殖を行っていたのでした。

 チャーリーの口を割らせるため、毒虫に咬ませて拷問しようと言い出すアナベル。

 恐るべきサディストの本性がむき出しになるこのシーンは、よくまあ19才でこんな冷血女を上手く演じるなあと、キャシー嬢の達者さに唸らされます。 

 ところで何を今さらですが、チャーリーの顔は、山下大将こと
故・水野晴郎氏にソックリでつね。

 「拷問なんて非道すぎる。キチガイ沙汰だ!」

 とガラにもなく制止しようとするジョージに、アナベルは自分のオパーイをヌバッとはだけて見せます。

 そこには入れ墨された囚人番号が!

 「私はナチの収容施設でこの入れ墨をされたのよ!人間なんか、どうせみんなキチガイなのよ!」

 つまり彼女はユダヤ系であり、凄惨な体験から、人類全てを憎むようになったと。

 殿方には有難いサービスシーンか知れませんが、ジョージも散々彼女とセクロスしておきながら、今さら入れ墨に驚くなっつーの。

 一方、2人のザコスパイから連絡を受け、水爆奪取作戦の経過をソ連に報告する幹部級スパイ。

 何とその正体はホテルのオーナーでありました!

 って意外は意外だけど、それで盛り上がったりは全くしないのはギララと同様。

 失礼ながら二本松監督は、ドラマテラーとしては基本すらもロクに分かっていないような印象を受けますぜ。

 翌朝・・・・

 ジョージは戻ってこない、生活を立て直す見通しも立たないと悲嘆に暮れるゆかりは、赤ん坊を堕胎してしまおうかと悩みます。

 小室看護婦は、生命の大切さを説き、ゆかりを勇気づけようとするのですが、そこへ突然・・・・

 毒虫拷問によって、ついに発狂してしまった水野晴郎(もうイイやそれで)が、銃を持って乱入してきました!

 グヘヘヘーと不気味に笑いながら迫る彼によって、映画はいきなり「黒人狂気レイプ!狙われた爆乳ナース!」という熟女ポルノに!!

 水野晴郎に服を破かれてスリップ姿にされ、小室看護婦大ピンチ!・・・・っつーサービスシーンですね。

 しかしこのシーン、
顔は水野晴郎だけど、仕草はどう見ても松鶴家千とせ(古!)

 わっかるかなぁ? わっかんねぇだろうなぁ

 間一髪、ゆかりが呼んできた米兵らによって、水野晴郎は射殺されました。

 薬中というだけで、特に悪人でもない彼が殺されなきゃならないのは理不尽な気もしますが、この後に続く大量理不尽死に比べれば、こんなのは序の口もイイところです。

 小室看護婦は半裸で南雲博士にすがりつき、

 「私、レイプされかけましたのよ。怖かったわ〜。先生あたしを守って〜」

 と、いやセリフでは言いませんが、そういう可哀想な女っぷりをグイグイアピール!見事にピッチです。

 ところが南雲博士の方は、どこか上の空で・・・・

 南雲博士は、水野晴郎が今際の際に言い残した、

「ジェノサイド!」

という言葉が気にかかっていたのです。

 ジェノサイド・・・・本作では「人類皆殺し」という意味で用いられる言葉ですが、水野晴郎はどうしてそんなことを言い残したのでしょうか?

 スパイの所から逃げ出してきたジョージは、ゆかり、南雲博士、小室看護婦らと、子島の小屋で合流しました。

 ジョージから毒虫拷問のことを聞かされた南雲博士は、

 「そうだったのか。それなら『ジェノサイド』という言葉の意味を突き止められるかもしれないぞ!」

 などと言い出します。一体どうやって?・・・・

 南雲博士のアイデアは、

 
「水野晴郎と同じ毒虫に刺されれば、精神状態も同じになり、『ジェノサイド』の意味が分かる!」

 というクルクルパーなモノでした。

 ヨッパライの気持ちは酔ってみれば分かる!ってことでしょうか。

 そんなことをしたら死んでしまうと止める一同に、博士は、10分以内に解毒剤を打てば平気なのだと強弁して、自ら人体実験を始めてしまいます。

 ホントにそれで分かるのか?ていうかそうまでして調べなきゃイケナイことか、ジェノサイド?

 虫の毒で激しい幻覚を見る南雲博士!

 しかし仮説通りに、「ジェノサイド」の意味も幻覚の中で判明します。

 何とそれを教えたのは、毒虫たちのテレパシー(?)でした。

 毒虫たちは、人間同士の核戦争に巻き込まれることを恐れ、それより先に大群で人間を滅ぼしてしまおうとしていたのです!

 
つまり「ジェノサイド=人類皆殺し」とは、虫たちが最終戦争を仕掛けてくるという意味だったのです。

 「何て事だ!大変だぞ!」

 南雲博士は恐るべき事態だと慌てふためきますが、幻覚でそんなこと断言されても困ってしまいますわ。

 すぐに親島へ戻り、島民に「虫が攻めてくる」と報せなければ!(笑われる気がしますが)

 一同は小舟に乗って親島へと急ぎますが、途中で水中銃を持ったスパイらに襲撃され、全員が捕まってしまいます。

 どうでもイイことで皆が行ったり来たりするグダグダな展開は、やっぱりギララの監督さんらしいなあとゲンナリ。

 ジョージとゆかりは水爆の落下地点を聞き出すために連れて行かれました。

 一方、南雲博士は、銃を持ったアナベルの捕虜に・・・

 「洞窟でアナタを撃ったのはアタシよ。毒虫を繁殖させたのもアタシなの」

 「うーむ、キミは毒虫のような女だ!」

 「何とでもお言い。アナタも私の毒虫の生贄にしてやるわ!」

 とか何とか、メンヘラサド女と毒ヲタ学者の安っすいやりとりが延々続きます。

 南雲博士絶体絶命!

 が、アナベルが威嚇のために放った不用意な一発が飼育容器を傷付け、中から毒虫の大群が飛び出してきました!

 自身が手塩にかけた虫たちに襲われて絶叫するアナベル!

 さんざ人の命がどうのとほざいていた南雲博士ですが、この時ばかりは我が身可愛さにすっ飛んで逃げ出し、哀れアナベルはそのまま悶死してしまいます。

 一方ジョージとゆかりは何とかスパイらから逃げだし、子島の小屋に身を隠します。

 しかしそこへ、アナベル邸から飛び出した毒虫たちが襲撃してきました。怯える2人!

 まあ毒虫つっても、画面に映るのはミツバチとスズメバチのイメージ映像だけなので、怖くも何ともありませんが。

 ついに窓を破って屋内に侵入してくる毒虫たち!

 ジョージたちは木切れや衣服を振り回して必死に抵抗します。

 
なるほど新藤恵美はここで脱ぐんだなと思いましたが、生憎そんなシーンはありません(^^)

 「ボクに考えがある。キミだけは必ず守ってみせるぞ!」

 などとジョージはゆかりに大見得を切りますが、彼が無いオツムを振り絞って考えた作戦とは、

 
「ゆかりを床下に隠し、自分がその上でフタになる」

 という、どんだけシンプルなんだよってモノでした。

 2人一緒に床下に隠れればイイじゃねーかと視聴者がツッ込む間もなく、ジョージは「人間の盾」ならぬ「人間のフタ」となって憤死してしまいます。

 翌朝・・・・

 2人の身を案じてやって来た南雲、小室両氏によって、ゆかりは保護されました。

 傍らで見事にくたばっているジョージや哀れ。

 しかし彼を弔っている余裕はありません。毒虫の脅威を、一刻も早くアナウンスしなければ!・・・・

 ところが親島に戻った南雲氏らを、ゴードン中佐が待ち受けていました。

 「我々アメリカ軍は、水爆の回収をあきらめて帰還することになった。事情を知る南雲君も一緒に来てくれたまえ」

 「そんなヒマはない!ボクにはやらなければならないことがあるのだ!」

 「いいや腕ずくでも連れて行くぞ」

 銃を突きつけられ、やむなく米軍機に乗り込む南雲博士。

 「ボクは必ず帰ってくるぞ!」

 そう叫ぶ彼を、小室看護婦は呆然と見送ります。

 一体米軍は、南雲氏を拉致同様に連れ去ってどうしようというのでしょうか?

 一方、ジョージを失って絶望したゆかりは、独りヤケクソ気味に船を漕ぎ出します。

 何処へ行くのかと呼びかける小室看護婦に、ゆかりは、

 「虫のいない所よ!虫のいない所へ行って、ジョージの赤ちゃんを産むのよー!」

 と叫びます。

 
虫のいない所ってキミ・・・・ジオン共和国か?(^^)

 機上の人となった南雲博士は、どういうつもりなのかとゴードン中佐を難詰します。

 ゴードンは冷然として、

 「この飛行機から、リモコンで水爆を爆発させる。毒虫も水爆も同時に解決できるワケだ」

 「そんなことをしたら島の人々は全滅だ!」

 「機密保持が優先するんだ!ソ連に水爆は渡せない!」

 「水爆で毒虫が死滅するとは限らないぞ」

 「そのためにキミ(南雲)を連れてきたんだ。毒虫が世界中を襲っても、キミの開発した解毒剤があれば、我がアメリカだけは安全だからな」

 ベトナム戦争たけなわの頃ということもあってか、本作のアメリキ軍ってば徹底してトンデモ外道であります。

 その時突然、クルーの1人がゴードン中佐に銃を向けました!

 「水爆は爆発させないぞ!最終戦争の引き金を引くのはゴメンだ!」

 イキナリ湧いて出てそう叫ぶ彼は、
ウィリアム・ドュウクという役者さんで、予告編でも大々的にクレジットされています。つまり扱いは主役級なワケです。

 
頼りにならない南雲氏は只のダミーで、彼デュウクこそが真のヒーロー、主人公だったのです!

 
戦え!負けるな!ボクラのデュウク!!

 デュウクは決然としてゴードン中佐を射殺!見事に水爆爆破計画を阻止します。さすがはヒーロー!

 
しかしそのはずみでリモコンのスイッチが入ってしまい、水爆は結局破裂!

 島の上空に高々とキノコ雲が立ち上がり、多くの島民やスパイたちと共に、哀れ小室看護婦は帰らぬ人となってしまいました。

 さらに島からは、毒虫の大群が飛び上がります。

 南雲博士の懸念通り、水爆でも彼らを全滅させることは出来なかったのです。

 虫の群れは米軍機に襲いかかり、機体は空中爆発!

 
せっかく登場したヒーロー・デュウク、そして南雲博士らも、全員南海の藻くずと消えました。合唱・・・・

 遥かに原子雲を望みながら、フラフラと波間を漂うゆかりの小舟・・・

 結局生き残ったのはゆかり1人だったわけですが、間もなく勃発するのであろう核戦争、そして虫との大戦争によって、彼女もまた命を落とすことは確実でありましょう。

 人類社会の終焉を強く暗示して、この真っ暗けなオハナシは幕を閉じます。

 毎度しょうむない再現記事を最後までお読みいただき、まことにありがとうございます。

 如何です?くっだらねー映画でしょー?(^^;)

 実は本作は、企画の段階では、放射能か何かによって巨大化、凶暴化した虫の群れが人間を襲うというクリーチャームービーだったようです。

 巨大昆虫による襲撃シーンは実際に撮影もされ、その一部は予告編で見ることも出来ます↓



 なかなかショッキングで怖そうな絵でしょう?

 ですから当時、この予告編を見て、面白そうだな、見に行こうかなと思った観客も結構いたのではないかと思います。

 しかしこうしたクリーチャーものとしての要素は、「そんな大きなプロップを多数用意する金も時間もない」という、手前勝手極まりない制作者側の都合でボツとなってしまいました。

 その代わりに、当時話題となっていた水爆の安全管理問題を前面に押し出し(映画公開2年前に、米軍機墜落とそれに伴う水爆喪失事件が起こって大騒ぎとなった)、そこへ松本清張風の味付けをして(米進駐軍の暗躍・浮気を隠そうとしてアリバイ証明が出来ない・ナゾの襲撃者等々)、一見社会派風の作品をデッチ上げたということらしいです。

 しかし本来見せようとしていたモノを見せないというのは、例えばポルノ映画が「女優さんを呼べなかったので濡れ場は全部カットになりました」と言っているようなものであり、面白いとかつまらないとかいう以前に、興業としての当たり前な誠意を欠いているように思います。

 監督の
二本松嘉瑞氏はエール大学で映画・演劇を学んだインテリという触れ込みなのですが、海外留学なぞしているヒマがあったら、映画人としての基本的な心構えからまず勉強し直して欲しい・・・・ってもう言っても遅すぎますけれどね(^^)


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