番外記事

キミは世界の平和の盾となったか?(後)


 「ブロッカー軍団・マシーンブラスター」紹介記事の後編です。

 今回はエピソードの1つを取り上げて、本作のトホホな内容の一端に触れていただこうと思います。
 ご紹介するのは
第10話「地獄の空母!ヘルグライド(後編)戦え!涙の河を越えて」です。


 
 この第10話と、1つ前の第9話は、本作中唯一の前後編構成で、敵の新兵器によって一敗地にまみれるブロッカー軍団と、その復活、逆転劇を描いています。
 しかし前後編だからオハナシのスケールが大きかったり派手になったりしているかというと全然そんなことはなく、むしろいつにも増してショボくてアホらしい内容になっているのがいかにもブロッカー軍団。


 それでは以下、その残念な風味をお楽しみ下さい↓


 サブタイにもなっているヘルグライドというのは、かつてモグール帝国が地球に飛来した際に乗り込んでいた無敵の移動要塞なのだそうです。

 第9話でこのヘルグライドがザンギャックによって復元され、ゴロスキーを艦長に戴いて攻め込んできました。


 ヘルグライドにはシュトルムドランクという何故かドイツ語風の装備がありまして、これはカイブッダーを大竜巻に乗せて急速発進させるシステムです。

 しかもその際、カイブッダーは何倍にもパワーアップされるという大回転魔球のような便利機能も付いているのです!


 こうして強化された竜型カイブッダー・ヘスタードの巻き付き、自爆攻撃により、ブロッカー軍団は全機が大破。完全敗北を喫してしまいます。


 行動不能となり、海中に沈んでしまったブロッカー軍団ですが、懸命の救難活動により、全機がアストロ母艦に回収されました。


 みんな仲良く頭をケガしたものの、何とか隊員たちの命も無事でした。
 しかし彼我の戦力差は今や歴然!

 
「敵のカイブッダーはおそらく10倍くらいにパワーアップしていました」などと実にテキトーな印象を語るビリー。

 「どんくらい強ェんだよ?」
 「10倍くらい強ェよ」
 って完全に小学生の会話です。


 ブロッカーマシンを強化改造しなければ、パワーアップしたカイブッダーには歯が立たないだろうと語る由利博士。

 その改造のためには、
幻の化学式メソッドXO-1なるものが必要なのだそうです。

 クッソ胡散臭ェぞ
メソッドXO-1!
 ていうかこの由利博士の悪党ヅラはどうよ。


 化学式メソッドXO-1は、それを発見した石田博士の未亡人によって管理されています。
 石田夫人は長らく行方不明だったのですが、
国際防衛基地本部付属病院に入院していることを、ようやく秘密捜査員が突き止めました。

 由利博士は大急ぎで病院へ駆け付けます。


 首尾良く石田夫人と面会できた由利博士ですが、夫人の病は重く、ほとんどベッドに寝たままの状態でした。

 由利博士は、かつて彼女に会ったことがあるのを思い出します。
 なんと彼女は旧姓を北条といい、ブロッカーマシンを開発した北条博士の妹だったのです。


 そして彼女の枕元にあった写真立てを見て、二度ビックリの由利博士。

 
「あっ、これは厳介!」
 「えっ、息子をご存じなのですか?」

 そう、彼女はブロッカー軍団のリーダー、石田厳介の母親でもあったのです!!

 これがどんだけアホらしい設定かと言いますと・・・・


 ←図にするとこう

 これだけ濃密な血縁関係にありながら、彼らは互いの素性や居所を知らずに暮らしていたというのですからワケが分かりません。

 
厳介とユカは従姉妹同士なのを知らずに同じ職場で働き、厳介はユカに惚れちゃってるというね。

 従姉妹だから良いけど妹だったりしたらどうすんの。
エチぃゲームかよ。


 とまれ、石田夫人の保管していたメソッドXO-1の資料は無事に手に入りました。

 これでブロッカーマシンを強化改造することが出来そうです。


 アストロ基地に戻った由利博士は、厳介に急いで母親を見舞うように促します。

 しかし
脳筋な厳介は、いつモグールが攻めてくるか分からないのにそんなことはしていられないと頑なに拒みます。


 天平クンは「意地を張らずに会いに行け」と厳介を諫めますが、彼は聞き入れません。

 
ブチ切れた天平はボディブロー1発で厳介をノックアウト!
 さすがは少年院出の暴れん坊。


 昏倒した厳介を簀巻きにして、お母さんの病室までエッチラ運び込む天平と仁太。

 この2人は孤児ですから、せめて厳介には親を大切にして欲しかったのかもしれません。
 でもそのやり口と格好は、ほとんど死体を遺棄しに行くヤクザ屋さんです。


 ともかく母親と再会した厳介は、病やつれした母の姿にさすがにショックを受け、病室に居残って世話を焼くことに。

 そうだよな、この世にお母さんくらい有難いものはないよな(涙)


 一方で、メソッドXO-1を利用したブロッカーマシンの改造作業も始まりました。

 改造と言いましても、
電気でズビビビビ!みたいな昭和臭全開の謎作業です。
 昔はこういう、何かでショックを与えてお手軽に強くなるみたいなロボ描写が多かった気もします。


 ところが折悪しく、地獄空母ヘルグライドが再び出現!

 しかも出撃させた翼竜型カイブッダー・テラノードンは、なんと厳介と母親のいる病院を襲撃してきたのです!大ピンチ!!


 天平たちはフリーダムで必死に防戦しますが、ただでさえ10倍に強化されているカイブッダーに、こんなハナクソみたいな攻撃では全く歯が立ちません。

 
ちなみにフリーダムというのは、ブロッカーマシンから分離するコクピット兼小型戦闘機で、つまりホバーパイルダーとかコアファイター的なメカのことです。


 戦場は次第に、厳介母子の病室にまで迫ってきました。

 母のそばを離れたくない厳介に対し、石田夫人は任務に戻るよう厳しく叱咤し
ます。

 「すぐに戻ってくるよ、母さん!」

 後ろ髪を引かれながらも病室を駆け出て行く厳介!


 ここはもう危険だから、病人を地下室に避難させるよう、お医者さんは看護婦たちに命じます。
 しかし石田夫人はそれを拒んで、

 「私の命がもう長くないことは分かっています。だから息子が立派に戦う姿を、ここから見守っていたいのです」

 そう言って、ベッドをさらに窓際に寄せるように頼むのでした。


 「お、奥さん・・・・」

 石田夫人の悲壮な決意に打たれて、一同もらい泣きでござる。

 もらい泣きはしたけれど、一緒に病室に留まるほど酔狂でもない病院スタッフは、石田夫人をほったらかして逃げて行ってしまいました(オイ

 1人残った病室で、窓外の激戦を眺めるお母さんですが・・・・
 一方、メソッドXO-1による強化改造のようやく終わったブロッカーマシンを積み、アストロ母艦が戦場に駆け付けました。

 
毎度呼べば基地の方から飛んでくるって、便利なような○ってるような・・・・
 「エレパス!」の掛け声と共に戦闘スタイルにチェンジし、ブロッカーマシンへ乗り込む厳介のダサカッコ良さを見よ!

 ちな厳介を演じるは、コンボイ司令官こと玄田哲章氏!
 
飯塚昭三氏と並び、アニメ史上最も頼りになる声の人!!
 天平たちもブロッカーマシンに乗り込み、マシーンブラスターが晴れて完全復活しました。

 「燃える正義の!」
 「怒りを込めて!」
 「世界の平和の!」
 「盾となる!」
 「マシーンブラスターここにあり!!」

 
色々とアレな番組だけれど、毎回この口上と見得切りだけはホントにカッコイインゴ。
 いよいよ強化改造されたブロッカー軍団の威力を見せる時!

 天平たちはそれぞれの必殺武器をつるべ打ちに打ち込みます!
 しかしテラノードンは如何な怯まず、全身に火をまとってますます荒れ狂う始末。

 その進撃を押し留めるどころか、てもなく蹴散らされるばかりのブロッカー軍団。

 
え、ええ〜?・・・・
 「畜生、ビクともしないぜッ!」
 歯噛みする厳介。

 
いやあの、メソッドXO-1は?
 
ブロッカーマシンはバキバキに強化改造されたはずじゃなかったの?
 テラノードンの猛威はついに病院にまで及び、病室の壁が崩れ始めました。

 「キャア〜!!」
 悲鳴を上げる石田夫人!

 さあいよいよ、このオハナシのクライマックスとなるイカすシーンに突入だ!
 「もうここから動かない!」
 などと吹いていた石田夫人ですが、眼前に迫ったテラノードンにはさすがにヤヴァイと思ったか、すっ飛んで病室から逃げ出しました。

 のみならず、爆発のうち続く通路を猛然と走る走る!
 
まるで戦隊ヒロイン!!

 瀕死の重病人のはずだったのに、人間っていざ必死になれば何でも出来るんだなあと感心させられてしまったり。
 しかし石田夫人の全力ダッシュも空しく、病院はとうとう爆炎に包まれて全倒壊の憂き目に・・・・

 「母さァ〜ん!!」

 厳介の悲痛な叫びが響き渡ります。
 ここで由利博士が厳介に、

 「フリーダムに取り付けたエレパス増幅装置で、新しい円月回転が出来るはずだぞ!」

 とアドバイスを送ります。

 
いや先に言えよ!!

 しかもこのシーンの由利博士、ちょっと薄笑いっぽい作画になっちゃってるのが何とも・・・・

 そりゃあ石田夫人が死ねば、マシーンブラスター設立関係者で生き残ってるのは自分と厳介だけ。
 晴れて功績を独り占め出来てウマ〜なのかもしれません。
 
ヒドいヤツだよ由利元来。
 ともかくアドバイスに従ってブロッカーマシン4機は急速合体!

 光り輝く炎の輪となりました。
 新・円月回転の直撃を受けて、さしもタフだったテラノードンもさすがにたまらず、空中でバラバラに爆散しました。

 
ヘルグライドも撤退し、苦しかった戦いは何とかブロッカー軍団の勝利に終わったのです。
 廃墟と化した病院の跡地で、厳介は母の姿を求めて彷徨います。
 しかし・・・・
 そこで見つけることが出来たのは、壊れた写真立てだけでした。

 石田夫人は骨1つ残さずに亡くなられていたのです。
 「か、母さん・・・」
 「うおおお、母さァ〜ん!!」
 
 地面を打って号泣する厳介を俯瞰で写し、オハナシは何の余韻も無くここでオシマイです。

 「ブロッカー軍団・マシーンブラスター」のエピソード紹介、如何でしたでしょうか。
 まあ何てか、ねえ?(^_^;)

 前項でも書きましたように、本作は日本アニメーション(株)が初めて手がけた巨大ロボットアニメです。
 老舗の東映アニメや新興サンライズがロボットアニメで当てているのを見て、よし一丁ウチもということで制作されたのではないかと思います。

 つまりヒットしたジャンルに乗っかっちゃえという安直な企画だったのかもしれませんが、後追いだから何か新味をということでか、複数の主人公側ロボが強大な敵メカを共同でやっつけるという、いわば戦隊モノのテイストを取り入れています。こうした差別化のための積極的な努力は評価されて良いと思います。

 ただそうした独自の味付けで作品が面白くなったかというと全然ダメでして、まず何より、巨大ロボモノにとって一番大切な、敵をボコボコにやっつけてザマァ!なカタルシスが皆無というのは難でありましょう。
 ではチームものとして良く出来ているかというとコレもアカンくて、そもそれぞれのロボのキャラが立っていませんので、各機が補い合い、力を合わせて難敵に挑むという面白さは期待するべくもありません。


 ドラマ的にもアレであり、今回紹介したエピソードでも顕著ですが、色々とツッコミたくなる不合理、おマヌケな要素が多すぎて、肝心のオハナシの方が全く頭に入ってきません。
 当時の子供番組でこの程度はデフォだという向きもあるかしれませんが、にしてももうちょっと丁寧に脚本を書くべきだったんじゃないかと感じました。

  

 
文芸の斜め上っぷりは終盤でさらにターボがかかり、天平クンが田舎町の暴力団相手に暴れまくってコレを潰滅させたりですとか(モグールは出てこない)、捕虜にしたヘルサンドラ女王を防衛軍側が散々に拷問したりですとかの脳がウニになるエピソードが頻出。
 今となっては、そうした部分がむしろカルトな人気を集めていたりもするようですが、でもまあぶっちゃけ申し上げまして、
何なん、このアニメ。

 
 てことでオススメは出来ませんが、昭和のロボに興味のある方は、教養の一環としてご覧になってみるのも良いのではと思います。
 メジャーロボのパチモンのようなチープな味わいは、慣れてくれば病み付きに・・・・なるような、やっぱダメなような・・・・・


 追記・主題歌は
昭和のカッコ良さに満ちた名曲で、その勇壮さに胸が躍ります。さすがは小林亜星!


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