No.28

モンスター佃煮レビュー・3

 しょうむないモンスタームービーを一山いくらでぶった斬る、佃煮レビューの第3弾です。
 今回はWOWOWで見た旧作(と言ってもそこそこ新しい)と、先日見たロードショー新作との二本一組という、ゲームソフトの抱き合わせ商法みたいな形式でレビューしますね。と言っても、しょうむないモノ同士を二本抱き合わせているので余計にタチが悪かったり。

マィティージョー


 半世紀も前に作られた、いわゆるキングコング・エピゴーネンシリーズ、「猿人ジョー・ヤング」のリメイク作品である。
 オリジナルもかなりお子様向けの内容であったが、本作もいかにもディズニーらしい、毒にも薬にも
アシタバ茶にもならないスチャラカ作品。まあヒマつぶし程度にはなるであろうが、もっと気の利いたヒマのつぶし方はいくらでもありそうなのが情けない。



 アフリカの奥地から、アメリカの保護施設へと連れてこられた巨大なゴリラ、ジョー・ヤング。しかし彼を追って残忍な密猟者もアメリカへやって来て・・・というベタなストーリーで、後半はお定まりの市中パニックシーンとなる。
 オリジナル版では、ジョーは単に酒に酔って辺りを破壊するという佐木隆三パニックのようなオハナシ(意味不明)だったが、本作では密猟者の挑発によって暴れ出すという展開で、その密猟者はかつてジョーに指を食いちぎられたという因縁もあり、無理のない、なかなか巧みな構成になっている。



 しかしそもそもでっかいおサルが街で暴れるというだけで今日日エンタテイメントとして成立するのかということを制作者は自問するべきであったし、その上で作るにしても、さてでは何故ジョー・ヤングなのか、その素材で何を見せるのかということを、もっと精密に詰めておくべきだっただろう。
 それがないために、本作は全体にのっぺりとした平板な造りになっていて、大した見せ場もドラマの盛り上がりもなく、つまり特にやりたいネタもないから取りあえず人気作のリメイクを過不足無く作ってお茶を濁しておきましたっつー制作者の本音がミエミエであって、そういう力こぶのない物作りをされちゃうと、見ている方としては何だか哀しくなってしまう。もっと頑張ってよ。これならでっかい
小川直也が街で暴れる映画の方がよっぽど面白そうだぜ。(あるかいな、んなもん)



 まあ腐しっ放しなのも気が引けるのでちょっと書いておくと、前半のクライマックスとなるアフリカの高原でのチェイスシーンだけはなかなか見ごたえがある。
 広大なフィールドで、小山のようなゴリラと車が抜きつ抜かれつする様を長回しで捉え続けるのだが、眩しい陽光下のシーンであることとも相まって、その躍動する疾走感が素晴らしい。このテンションが後半まで続けば良かったのに。
 ちなみにエンディングでも草原をひた走るジョーの映像が用いられているが、こちらは様々な角度からの俯瞰シーンとなっており、どうもどこかで見たような絵だなあと思っていたら、
FF5のエンディングにそっくりなことに気が付いた。マジでサル真似だったりして。サルだけど。


エボリューション


 あの「ゴーストバスターズ」で一世を風靡したアイバン・ライトマンのチームが再び挑んだパニックコメディである。
 お話しと言いキャラクター配置と言い、もろ「ゴーストバスターズ」のリメイクと言っちゃってもいいくらいにあからさまな内容だが、そもあたしは「ゴーストバスターズ」が大好きであって、故に二番煎じであろうと面白いのなら何の不足もなく、クリーチャーもたくさん出てくるらしいのでワクワクしながら映画館へと足を運んだ。・・・のだが、あまりにもヘッポコな出来に
イヤ〜ンバカバカぶっちゃうから!前日にちゃんと睡眠をとっておかなかったら爆睡保証付きなほどつまんないぞ。



 ストーリーは、アリゾナの砂漠に落下した隕石に未知の宇宙生物が付着していて、それがたったの一ヶ月で地球生物46億年分の進化過程をトレースし、恐るべきクリーチャーに変貌して合衆国全土を脅かすというウルトラベタなものである。
 いやオハナシが陳腐なのは全然構わない。それが重要な映画じゃないからだ。しかし、であればこそ、その他の部分で本作をエンタテイメントたらしめる努力が為されるべきであり、どうもあたし的にはそれが感じられなかったのだ。



 端的には、本作の眼目であるはずのクリーチャー表現がつまらない。
 クリーチャーに対して類型的と言うのも妙だが、どれもどこかで見たような借り物のイメージで、出てきた途端にどんなキャラなのだか想像がついてしまう。
 
「うわあ、このクリーチャーにはどんな習性や能力があるんだろう?」
 というワクワク感がまるでないのだ。
 いわば戦う前から敵機械獣の性能が分かっているようなものなので、数だけやたらと出されても、見ている方はシラける一方である。中盤で暴れる飛竜だとかラスボスの巨大アメーバなんて、
やくみつるのマンガよりもステレオタイプでヒネリもクソもないんだから呆れちゃいますぜ。(失礼)
 そもそも地球生物のエボリューション(進化)を再現しているのだから、そんなに飛躍したデザインには出来っこないじゃないかというご意見もおありだろうが、たとえ既存の生き物をアレンジして作り出すにしても、それぞれにかつての「アフターマン」のようなインパクトを持たせたキャラを創出することは可能なはずである。それこそが映像作家のお仕事じゃないですか。フィル・ティペットがスペシャルエフェクツを手がけていると聞いて、ルンルン期待して出かけたあたしがバカみたいですよ。



 聞くところによると、元々本作の脚本はお堅い生物学の先生が書いたモノなのだという。だからこそ、酸素に対する適応だとかいうどうでも良いウンチクは入っているが、肝心のクリーチャー自体には何らのハッタリもない、つまりビジュアルとしてもキャラとしてもショッキングなアピールの出来ない凡庸なモノになってしまったのかもしれず、また製作陣としても、「学者先生が書いているのだから、オレたちの方でとりたてて工夫を重ねることもあるまい」なんつって、ある種のサボタージュというか、緊張感のない取り組みを是としてしまったのかもしれない。学者ふぜいにエンタテイメントなんて高等なことが出来るわけがないのにね。



 それでもライトマンらしい、思わず主人公たちが愛おしくなってしまう、ハートフルなコメディの楽しさがあれば許せたんだけど、どうもその点でもパッとしないしね。笑えないしノレないしでちょっと往生しました。・・・オーランド・ジョーンズがヒドイ目に遭うシーンは可笑しかったけど。
 全体に本作は、適当な企画をけばけばしいCGテクスチャーで包装しただけの、スカスカなバブリー物件とでも総括できるだろう。
 ライトマンも観客をなめきって、ゴーストバスターズ以降何も新しい勉強をしてこなかった怠慢を露呈してしまった感がある。
クリエイターだってやっぱり「エボリューション」しなくちゃね!



 追記・とは言え本作の真の面白さを、言葉の壁ゆえにあたしが掬い上げきれなかったという可能性も否定は出来ない。
 どうやらこの作品、全体として「肛門性愛」をおちょくったり笑ったりしている内容らしいのだが、あたしの中途半端な英語力では細かなお下劣ニュアンスまでは理解出来ませんもの。だからヤンキーが見たら爆笑するようなイカス映画に仕上がっているのかもしれず、もしそうだったら楓子いっぱい謝っちゃいます。


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