No.1

死国

 コーナーの1発目がこれというのも情けないが、せっかくW0W0Wで放映してくれたばかりなので書いておこう。いやー、笑い死にするかと思いましたわ。


 近年のJホラーと言われる一連のムーブメントは、(テキストにせよ映像メディアにせよ)その内容の余りの陳腐さ、センスの無さで、ちょっとでも人類の遺伝子を持っている者には見るに堪えないゴミの山だと思う。「リング」だとか「バラサイトイブ」なんかをもう一度見ろと言われたら、あたしはきっと、何でもするから許してって泣いて米ついちゃうぞ。


 以前パティオに、「最近の文芸作品はコミックボンボンと何も変わらない」なんて書いたけど、そんなこと言ったらコミックボンボンに失礼だからこの場を借りてお詫びする。ゴメンもうしません。


 
で、映画「死国」である。


 原作のテキストを読んでいないあたしにとって、見ていて不思議なんだけど、四国の人ってこの映画を見て怒らないんだろうか?


 モチーフとなるのは、「美しい日本の原風景」の中で暮らす、これまた「美しくも素朴な人々」ってことに制作者側はしたかったのかもしれないが、そこに映し出されるのはどう見ても、「電波も通わないヘッコロ谷」に押し込められて暮らす、「野蛮な因習にとらわれた、おつむの弱い土着民」であって・・・いやあたしが言ったんじゃないですってば!映画が言ったんですってば!


 さらにメインの登場人物からして、舞台となるヘッコロ谷へ東京からフラフラと帰省してきた色キチガイのOLと、つぶやきシローがふてくさったような顔の白痴の青年であって、彼の言うことにゃ、

 「四国ってのは死国のことやき・・・」

 って、ほ、本当?そこに住んでる人がいるのに、んなこと言い切りますかあんた。「やき」って、棒読みの方言でいい味出してる場合じゃないでしょ!

 さてホラーの中核となるのは、「反魂の秘術によって死者がよみがえる」恐怖である。まあそれはいいでしょう。そしてその「よみがえる死者」というのは、悪霊によって取り殺されてしまった、シャーマンの少女である。油粘土みたいなのっぺりした顔の女の子で、絶対零度の演技を披露しますが、まあそれもいいでしょう。

 だけどこの少女、別にそんな手の掛かることをして復活をせずとも、亡霊となって大っぴらに村内をほっつき歩き、夜な夜な村人を脅かして遊んでいるのです。演技の寒さとも相まってこれらのシーンはそこそこに怖く、四国お遍路グルメホラーツアーを堪能できます。

 がしかし!

 主人公のOLが、色キチガイ故の図太さで少しもビビらないことに業を煮やしたか、ついに彼女は生身の人間となってこの世によみがえります。その手で実際にOLにヤキを入れてやろうとでも思ったのでしょう。逆に幽霊故の神出鬼没さ、恐ろしさを失ってしまった彼女は、代わりに新たな能力を披瀝します。


 これが何と!
百万馬力のバイオニックパワーなんですよね(本当)。しかもどこで覚えたのか、解除不能の必殺ベアハッグという大技をひっさげ、「フンガー!」などと喚きながら村人の背骨をへし折って歩きます!お前はワイルドセブンのヘラクレスか!


 いやはや、何という逆転の発想!クライマックスになってホッと胸を撫で下ろしちゃうデクレッシェンドホラー!前半の怖さが完全にスポイルされ、映画館は爆笑の嵐となったのではないかと心配しますが大きなお世話でしょうか。何しろゾンビ少女、確かに人間の手には余りそうですが、
ガンダムなら勝てそうだもんなー。


 いやー、時代は変わっても角川は角川ということでしょうか、それとも若い人に供給する文化は、いつもこんなもんでオッケーということなんでしょうか。まあ蘇生後の少女も、別の意味で怖いけどね。


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